ふたつの選択肢
潤平はバレエがもっと上手くなりたい。
単純にそれだけである。
それなのになんだかややこしいことになった。
いま潤平の前にはふたつの道がある。
生川か、五代か?
五代バレエスタジオには千鶴がいる。
潤平の長所を認め、伸ばしてくれる。
技術的なことも正しく学べる。
しかし生川バレエスクールは規模がちがう。
・中村先生の細やかな指導
・妻村さんのピアノ伴奏
・まるで群舞のようなグループレッスン
・本物のステージに立つチャンスもある
そして夏姫がいる。
たぶん天才ダンサーだ。
生川にいれば夏姫と組んで踊れる。
バレエ上達のためには生川が優れているんじゃないか?
デートの約束
迷う潤平に向かって、都が走ってくる。
映画のチラシをたくさん持って。
明日のデートのために考えてきたのだ。
都は明日をめっちゃ楽しみにしている。
ふたりでお出かけするのを考えるだけで嬉しい。
可愛いわー。
中学生のデートってこんな感じなんか?
夏休み。
映画。
テーマパークもいいなーって!
潤平は胸を射貫かれる。
「決めた・・・俺、五代に残ろう・・・!!」
けっきょく都で決めるんかい!
男、潤平。
素直なやつである。
るおうを認めさせたい。
翌朝、サマースクール8日目。
潤平は都に宣言する。
ヴァリエーション発表会には出ない。
今日は、デートに行こうぜ。
それから、いつものようにるおうの部屋へ迎えに行く。
るおうを挑発する。
俺は都とデートに行くから
お前はヴァリエーション発表会に出ろ。
生川綾子に実力を見せつけろよ。
お前の踊りで奇跡を起こせ。
「じゃねーと、俺がっ・・・悔しいんだよっ・・・」
潤平の結論はこれだ。
実力をみとめられて世に出るべきなのは、るおうのほうだ。
生川の充実した環境は、るおうにこそふさわしい。
もやもやした気持ちを潤平はそのままぶつける。
都とのデートと、自分が上達したい思いと
圧倒的なるおうを認めたくない気持ちが混ざって
もうなにがなんだかよくわからない。
だが結論は、
-るおう、お前だけオーディションを受けろ-
しかしるおうはいない。
部屋がからっぽだ。