成長期の誘惑
「お前は、0だ」
中村先生にはっきり言われた。
絶望的すぎる。
以前に綾子にも同じことを言われた。
あなたに期待するのは体格のみ、と。
レッスンで注意される内容は千鶴に言われたのと同じだ。
進歩している気がしない。
潤平はめげそうになる。
踊りたいのに、我慢して体幹トレーニング。
食べたいのに、人生で初めてのダイエット。
そして彼女からの誘惑だ。
「今日、うち来ない」
「いいんじゃね!たまにはサボっても」
「チューくらいなら・・・・・・」
「息抜き必要っしょ」
魅力的すぎて悩む。
黒島はかなりのナイスバディだ。
潤平の成長
潤平の悩みは中断される。
飛んできたボールをジャンプしてキャッチしたのだ。
気持ちがいっきに引き戻される。
ジャンプの感覚が変わった。
潤平は身体を動かして確かめてみる。
中村先生の説明が頭によみがえる。
地道な基礎練習が効果をあげている。
感動。
トレーニングを続けていると微妙な進歩がすごくうれしい。
潤平はこおどりりして生川に登校する。
廊下で跳ね回った。
「中村先生っ!」
「俺っ、マシになった」
「ビバ基礎練っ!!」
ニコラスになれ
同時に潤平は後悔する。
バレエを小さい頃から続けていればもっと身体をコントロールできていたのに。
ずっとやっている奴らには追いつけないのか。
潤平の頭にあるのは、るおうだ。
るおうのアルブレヒト。
身体コントロールの極み。
「アルブレヒトでは太刀打ちできない」
中村先生は潤平に課題をあたえる。
「お前はバジルを踊れ」
前に岩井先生の家でみたあれだ。
ニコラス・ブランコの踊っていたやつ。
生きる喜びそのもののようなダンス。
潤平がバレエを始めるそもそものきっかけ。
幼い潤平にの衝撃をあたえてくれたダンサー。
「お前の一番の強みはその持って生まれた陽気で明るい人を惹きつける力」
「お前の面白いところは全てをを跳び越えて奇跡を起こすんじゃないかと胸躍らさせてくれるところだ!」
潤平のキャラで役柄を染め上げ、テクニックを忘れさせる作戦だ。
潤平はがぜんやる気になる。
「俺っ・・・ブランコになる・・・!!」
バジルならなんとかなるかもしれない。
ブランコのバジルはすごいし!
自分がいま持っているもので闘うのだ。