海咲の失恋
海咲がフラれた。
いい気味である。
と一瞬おもうが、事情を知ると
応援したい気もしてくる。
海咲には京都に彼女がいる。
3年半付き合っていて
自分をよく分かってくれる。
よそに女がいるとわかっていても待っていてくれる。
都合のいいキープだ。
海咲はすっかり安心している。
「会うて抱きしめてほしいわ」
東京から京都に電話をしてあっさりフラれた。
海咲はマジで焦る。
すぐさま京都に直行したが、だめだった。
東京の彼女がエグい画像を流したのだ。
まあ仕方ないとはいえ、
取りつくしまもなかった。
琵琶湖での会話
海咲は滋賀の大和に会いに行く。
大和も同じくフラれていた。
さらにバレエも辞めてしまった。
留学して自分の限界が見えたという。
バレエ団に入れたとしても
ソリストにはとてもなれない。
それでも全てをかけて
バレエをやる気にはならなかった。
潤平とは違う。
あんな才能は自分にない。
「真の、才能の輝きは
濃い影を作る」
海咲だって自信はない。
バレエをなんて「辞めたほうが」
「人生の成功・幸せには」「近いのかもしれん」
大和が辞めてしまったのはさみしい。
響の辞退
海咲は東京に戻って
『眠り』のレッスン再開だ。
海咲と響、夏姫・潤平が揃ったところで
パートナー交代を提案される。
潤平は露骨に嫌がる。
「せっかく夏姫と息合ってきたのにっ」
無邪気だ。
同時に無神経でもある。
今回は海咲に共感してしまう。
潤平の言葉を受けてか
響はオーディションを辞退して
部屋を出て行ってしまった。
自分は当て馬だから
オーディション落選は確実。
自分と組んだパートナーから
恨まれる前に辞退したい。
「私にはお金も支援もない」
「何より・・・」「この顔で」
「生きてるだけで蔑まれる顔で」
「プロのバレエダンサーとして
舞台に立つなんてありえない」
高校を出たらバレエは辞める。
働きながら定時制の看護学校に行く。
響は現実的だ。
夢見ることができない環境に
ずっと置かれてきた。
それなのに別の世界を知ってしまった。
家にも容姿にも恵まれて
前向きにプロを目指す奴らに
囲まれているのは辛い。
海咲は響を追いかける。
逃げる響を追いかけて捕まえる。
「ちょっとつき合うて」
どこに連れて行く気なのか?
こういう根深い劣等感は
なかなか克服がむずかしいぞ。
響が不利なのは事実だし。