潤平は都のことで頭がいっぱいだ。
音楽のなかに昨夜のイメージが浮かび上がる。
「一緒に、踊ろ?」と言ったときの姿勢。
顔のホクロから首へ、腕から指先へ、
自分に向かう視線。
いっぱいの笑顔と体温を思い出す。
学校でもいい感じである。
都は潤平を見て笑う。
あごに教科書をあてて。
レッスン室での騒ぎを考えて吹き出してしまった。
ふたりのあいだにある雰囲気に、
クラスメートが気づいて突っ込んでくる。
兵ちゃんの誘いを断って、
潤平はレッスンへ向かう。
パ・ド・ドゥはめっちゃ照れる。
今日のレッスンはパドドゥの練習だ。
スタジオで潤平は動けなくなる。
照れてどうしようもない。
「心を込めて、お互いの目を見ながら・・・手を取る」
って、そんなことできるか!
見つめ合うとか無理。
目の前に、都の顔がある。
潤平はただの中二男子である。
子どものころからやっていたわけではないから、
感性が麻痺していない。
顔を見るだけで心が波立って普通でいられない。
ある意味、感情豊かだが
踊るどころではない。
レッスンを回想していると昂ぶってきた。
都は脚を褒めてくれた。
「すごいねっ、
生まれつきこんなあしで
バレエに望まれてるんだね」と
自分は才能があるのかもしれない。
背が高くなって、テクニックも身について
ステージの上で都を持ち上げるイメージを思い浮かべる。
妄想が暴走。
潤平は自宅を出て深夜に駆け出す。
「五代に望まれたいっっ」
「五代をっ・・・持ち上げたいっ・・・」
心の中の叫び。
恋である。
中二男子は都の家まで来てしまった。
ついにライバル、るおうのダンスが見える
スタジオに着いた潤平は虚を突かれる。
潤平が発見したのは都ではない。
レッスン室の窓に影が映る。
踊っている。
見ただけでわかるすごいやつ。
こんな踊りをするのは何者か?