千鶴の提案
潤平が走り去った後の砂浜で
千鶴がるおうに提案する。
るおうのとらわれている呪いを
魔法に変えるため協力させてほしい。
千鶴がるおうをレッスンし、
ダンサーとして世に出られるよう
手配するという意味なのだろうか?
実力はあるが、町のダンス教室の講師だ。
千鶴は、どんな方法を使うつもりなのか?
かたわらで都は砂浜を眺める。
潤平が走り去った方向だ。
夏のどしゃぶりの中を帰って行った。
海咲の踊り「正統派王子の気品」
サマースクールではヴァリエーション発表会の最中だ。
海咲が踊っている。
圧倒的にうまい。
「頭がよくて自分を知っていて野心もある」
綾子は精確に海咲を評価している。
ダンサーになるためなら何だってする。
海咲はそういうやつである。
有名ダンサーを観察し、長所を取り入れる。
動きのひとつひとつにそれがあらわれている。
生川バレエ団の目指すものを考慮し、
それに合った方向で踊りを作り上げる。
自分の素質と環境を吟味し、
最高の条件を整えていく。
ライバルが現れたら汚い手だって使う。
現実世界で成功したかったら「努力、友情、勝利」なんてことはありえない。
でもいちばん奥底にあるのは、バレエを手放したくないと言う気持ちだ。
そのためだったらなんだってする。
口で「なんだってする」というやつは多いけど、
現実に「なんだってする」としたら
海咲のような行動になるだろう。
踊り手の鑑のような男である。
結果としてできあがったのが
「正統派王子としての気品」だ。
海咲は最有力候補である。
潤平の帰還
最終日が終わり、教室を出る綾子の前に潤平が突入する。
「間に・・・合っ・・・た・・・・・・」
強引。
綾子の腕をつかんで教室に引き戻す。
ピアノの妻村さんにお願いして無理やり音楽を始めてもらう。
雨の中を走ってきたのでずぶ濡れだ。
水をボトボト落としながらそのまま踊りはじめた。
「ジャンプ一つで、変えよった・・・」
潤平はどんな踊りを見せるのか?