思春期のバレエ
夏姫と潤平のパドドゥは、
イメージとずれていた。
「わたしがもう・・・終わったわ・・・」
いきなりの告白である。
「生理きちゃった」
女子のピークは生理がくるくらいまで。
夏姫は悔やんでいる。
身体のラインがいちばん美しい時期に
海外のコンクールに出て
勝負すればよかった。
英国ロイヤルバレエ学校の
スカラシップをとって
ロイヤルバレエ団を目指したかった。
可能性が閉じられてしまった。
ふたりで踊ったことで思い知らされた。
「今、潤平と踊って、
あの光が弾ける感じがなかった」
ひとは年をとるにつれて
人生の選択肢が狭まっていく。
夏姫が直面しているのはそれだ。
中1で真剣に受け止めている。
男子の成長期とバレエ
「わたしもう、潤平の才能に
釣り合わなくなってしまったんだ」
落ち込む夏姫を潤平は抱え上げる。
「軽ッ・・・ヤッベ、軽すぎッ」
潤平も成長期である。
夏姫を持ち上げられるようになっている。
バレエを始めてから身長が20センチ伸びた。
体重は20キロ増えた。
急激な増加だ。
身体がイメージ通り動かない。
手脚が遅れる。
バランスがとれない。
ジャンプも違う。
成長痛で体中が痛い。
「俺が下手になっちゃってんの」
バレエを始めるのが
遅かったせいで、あせる。
しかし乗り越える。
「努力でどうにかなることなら簡単!」
「いくらでもする」by夏姫
筋力がつけば、ちゃんとした
パドドゥができるはず。
思春期のふたりは夢を見る。
前よりもっとすごいことができる。
ロイヤルだって、
ボリショイだって、
マリインスキーだっていける。
成長期の先をイメージして乗り越えよう。
対処法は「変わらず、
日々のレッスンをすること」
「くれぐれも無理はせず、
痛みがあれば休むこと」
それでも、あせるわ。
「センスねーな」
潤平は「GEISHA」公演から
あっさり外されてしまった。
ニンジャ役の稽古の時に
バック転でダメ出しされた。
挽回しようと痛みを押して
2回転を見せたらはずされた。
「お前、センスねーなー!!」
銀也のコメントである。
「やっぱ潤平なしでいいやー」
めっちゃショックだ。