ヌッくんの殺人
ヌッくんはぶち切れている。
ナイフで兵太を殺すつもりだ。
「お前は殺していい人間だっ・・・!」
絶叫して兵太に馬乗りになる。
そのまま刺そうとナイフを振り下ろした。
フィンガーリングに指を通しておけば
ナイフを落とすことはない。
確実に殺せる。
兵太は右手でナイフをつかんだ。
出血する。
思わず取り落としたナイフをヌッくんは握りなおす。
ヌッくんのお母さんがドアを叩いている。
兵太はあやまる。
「ヌッくん・・・、ごめんな」
「ごめんなさい」
まだ殺せる。
ヌッくんの瞳が小さくなった。
「ゆるさねぇよ!」
またもや絶叫
「ゆるさねぇ」
「ゆるさねぇ」
「ゆるさねぇっ!!!」
「一生・・・!!!」
兵太の命拾い
兵太は助かった。
ヌッくんが我に返ったからだ。
タクシーで家に帰り、
自宅で手当てしてもらった。
(実家は総合病院だ)
手を切っただけで済んだ。
兵太の親とヌッくんの親が話し合って
事件は公にせず、兵太が転校することになった。
無事でよかった。
しかしよくわからんが
兵太はヌッくんを好きなのだ。
ヌッくんもキモいが、兵太も相当キモい。
潤平の帰還
取り乱した兵ちゃんのお母さんは
潤平へ電話した。
悪いのはいつも潤平だ。
そんな思考回路でもあるのか。
兵ちゃんのお母さんも相当だ。
潤平はいそいで空港から帰る。
事件から生還した兵ちゃんと潤平は屋上で語り合う。
兵ちゃんは潤平を好きだった。
ずっと潤平のそばにいたかった。
ヌッくんにあやまったら「またつるんでやんよ」
といわれたから、あやまりにいった。
兵ちゃんは繊細なやつである。
潤平が遠くへ行ってしまうことがさみしい。
「じゃあ、俺のマネージャーでも、やる?」
潤平からの新たな誘いである。
潤平は脳天気なやつだ。
「自分が嫌われるなんて知らない」若者。
そこが兵ちゃんにはたまらなくうらやましい。