クライマックス
潤平は、またもや立ち上がる。
「・・・まだっ、納得でき」
るおうはバレエを崩さない。
自分は舞台をまっとうする。
美しく踊ってMVPをとる。
そしてコンクールを受けて海外へ行く。
バレエ団に入ってダンスールになる。
「潤平ごときが!!!」
どうして邪魔するのか。
るおうは悪魔になった。
感情に満たされながら
動作はどこまでも正しく美しい。
それは理屈の通じない、
純粋な、底なしの・・・憎悪の塊。
悪魔に等しい。
片方の翼を引きちぎられながら
王子を絞め殺す。
首を絞める巨大なシルエットが
ステージの後ろに大きく映る。
るおうは果てしなく回転する。
ザマァみろ!!!
ザマァみろ!!!
あいつもあいつもあいつも。
人間どもはどうして
こうも愚かしいのか。
なぜ僕をひきずり降ろそうとする?
邪魔するやつは殺す。
終演
照明が落ちた。
幕が降りた。
観客は大受けだ。
るおうは我に返る。
「・・・なんだ?」
「僕は、・・・誰だ?」
「・・・今、何か・・・」
自分がどこにいるか分からなくなる。
千鶴が近づいてきてほめた。
「よく切り抜けたわ」
「ロットバルトとしてね」
るおうは踊りのなかに
自分の感情を解放した。
バレエの役柄を崩すことなく、
内側にあるリアリティを引きずり出した。
音楽の終わりにも間に合わせた。
ぶじ王子を殺し
ステージを全うしたのだ。
アンコール
潤平は満面の笑みを浮かべている。
大満足だ。
「超楽しんできましたっ!!!」
とんでもないやつである。
ぜったい共演したくないタイプ。
客席からはアンコールがあがっている。
区民祭りの期待をはるかにこえる
どぎついステージになった。