たたらの高校入学
たたらは高校に進学した。
天平杯が終わってから
受験勉強をはじめ、ぶじ合格した。
(受験番号が天平杯と同じ023番。めでたい)
たたらは変わる気だ。
友だちを作る。
中学では友だちがいなかった。
まずは自己開示から。
新しいクラスの自己紹介で、
競技ダンスをやってることを話した。
ところが
「だっさ」
「恥ずかしくないわけ?」
前席の女子から心ないツッコミを受ける。
後席は同じ中学から来た不良の室井。
前途多難な高校生活だ。
「嫌な予感しかしない」
ガジュとの再会
たたらは1日目からさっそくパシリにされる。
歩いているだけなのに捕まった。
しかたなくジュースを買って
不良に渡しているところに
ガジュが飛び込んできた。
怒り狂っている。
不良のひとりに跳び蹴りを入れ
もう一人をけつバット。
無茶苦茶である。
昼にはたたらの教室に来た。
一緒に弁当を食べに来たのだ。
「俺らダンス仲間だべから」
「敬語やめりぃ」
「わかんねえ事とかあったら何でも聞けやい」
親切な先輩だ。
おかげで高校生活が救われそうだ。
東京ダンスグランプリ見学
ガジュと話しているときにメールが来た。
仙石が試合に出る。
東京ダンスグランプリ。
プロの出場する大会だ。
ガジュとたたらは後楽園ホールまで見に行く。
たたらが出た試合とは雰囲気が違う。
超満員。
立ち見も出ている。
取材カメラも多い。
みんな仙石を観に来たのだ。
ガジュの案内でたたらは
「眺めのいい特等席」に向かう。
下階の選手入場口だ。
立ち見だがすぐそばでよく見える。
仙石組はやっぱり特別だ。
踊る前からオーラがちがう。
日本で唯一の海外レベルの選手。
アマ時代から10ダンスで
世界ファイナリストだった。
たたらは仙石の試合をはじめて見た。
七三わけで髪をなでつけ
首には白い蝶ネクタイ。
燕尾服を着てスタンダードを踊る。
異様なダンスだ。
見ているたたらのほうが
平衡感覚を奪われよろけてしまう。
スタンダードなのに。
「よく見とけ」
たたらの脇をすり抜けながら仙石が言う。
そのまま歓声に囲まれ
取材記者のインタビューを受けている。
スターだ。
千夏との再会
たたらは会場で顔見知りに会う。
高校のクラスで前席に座っている女子だ。
教室では社交ダンスをバカにしていたクセに
競技会をみに来ていた。
露出の多い格好をしている。
タンクトップに短パン。
体が細くて胸が大きい。
大事なことだ。
男子目線的にもだが、
ダンサーとしてスタイルの良さは
何にも代えがたい。
ダンス経験者か、少なくとも
ダンス関係者だったのだ。