マリン母との対面
ムラサキとムラサキ父は
マリンの家を訪れた。
ケガをさせたことを謝りに来たのだ。
前回の対決でムラサキは
マリンを吹き飛ばした。
マリンの母は異様なオーラを発している。
スター・ウォーズのレイア姫そっくりだ。
年を取って反乱軍の将軍となったあたり。
玄関に立ちふさがりムラサキたちを見下ろす。
ムラサキの父は揺るがない。
金色の長髪、サングラスのまま
冷静に謝罪の言葉をならべる。
あくまでも丁重にマリンを気づかう。
マリンの母はムラサキの力を気にしている。
マリンには武道を学ばせている。
そうやすやすと吹き飛ばされるはずはない。
ムラサキはなにか特別な力でももっているのか？
「鉄山靠（てつざんこう）みたいな技だった」
居あわせたよしりんちゃんそう聞からいている。
「武術などならってらっしゃるのですか？」
レイア姫からの査問である。
本音をかたるムラサキ
ムラサキの認識はまったくちがう。
思いもかけない感覚で出来事をとらえていた。
レイア姫からの尋問にまっすぐむきあい、
ムラサキは自分の思いを返答し始めた。
ムラサキはマリンと対話したかった。
自分の感覚は体に閉じ込められている。
マリンの感覚も閉じ込められている。
言葉で伝えきれない部分があまりに多すぎる。
マリンと感覚を共有したかったのだ。
そのために「鉄山靠」のごとき事が起こった。
ふたりの間にある大きな壁を超えたかった。
悪いことはぜんぜんしていない。
レイア姫は激怒した。
ケガさせたことを謝るどころか
ムラサキは自分を正当化している。
「命にかかわるようなことが
起きたらどうするつもり？」
武術はダンスの一部
「きちんと謝りなさい」
ムラサキの父は冷静にうながす。
「なににあやまるの？」
ムラサキにとって何も悪ではない。
ケガをさせることも
死んでしまうことも、
すべて生きている上で起こりうること。
目をそらして知らんふりしない。
自分たちがやったことは
たんなる武術の立会ではない。
対話だ。
マリンのことを知りたかった。
自分のことも伝えたかった。
言葉に捉えきれない全身の感覚、
生きて死ぬまでの時間の流れ。
自分の周りにある世界。
自分が生まれる前からあるたくさんの生命。
死んだあとも動き続ける世界。
自分が世界にのこした波紋を感じ取りたい。
「わたしたち一緒に踊ってたの」
突拍子もない表現だが、真実。
レイア姫の理解できない理屈だ。
ダンサーであるという自覚
山上でムラサキは思い出した。
小学校の頃の暴力沙汰。
自分はダンサーであると
あのときはじめて自覚した。
言葉で伝えきれない
無数の感覚で他者と交流する。
自分はそういうタイプの人間だ。
つまりわたしは「ダンサー」だ。
ようやく思い出した。
自分にとって生きることが
すなわちダンスすることになる。
ソラと出会い、翔之助と出会い、
山ごもりの過酷な期間をへて
ムラサキは本来の自分を思い出した。
ムラサキは山道を登る
山腹の茶屋に到着した。
なぜか翔之助がいる。
ダンゴをほおばっている。