ラテン鈴木がダンスに集中し、しがらみを振り捨てる
ラテン鈴木がフロアの上で強烈なオーラをはなつ。
日本国内のワクにとらわれず全力で戦っている。
制限を外してもいい。
自分の心に許可したのだ。
鈴木のダンスは変わった。
観客にははっきりと鈴木の変化が伝わる。
帝王・杉木にもメッセージが伝わる。
「杉木、見ろ!」
「俺のダンスを身体中に焼きつけろ」
「俺の決意を脳に刻め」
「俺は必ず頂点に立つ!!」
ラテン鈴木は3位とすでに決まっている。
大人の事情ってやつだ。
だがしがらみを気にすることなく、鈴木は最高のダンスを見せる。
ベーシックのみ、派手なところのいっさいない踊りで観客を引き込む。
「日本のダンスの歴史が変わるかもしれない」
フロアに熱気があふれ、期待が高まる。
「まさか1位に!!」
鈴木は父を超えた
杉木は喜んでいる。
「あなたもやっと同じ境地に来た」
杉木は孤独だ。
自分の勝利を信じるものが誰もいないなかで、全力をつくす。
ダンスが圧倒的に素晴らしければ、世界はみとめる。
みずからの力を信じて進む。
社会が勝手に決めた限界線をこえて、杉木と同じように戦う。
鈴木の父も、かつてダンス界のしがらみと戦ったのだ。
息子の挑んでいる戦いを、鈴木父も理解している。
日本と世界の間にある壁。
父は海外でのダンス活動を禁じられた。
ダンサーとして安定した人生を送るため、父はルールを受け入れた。
息子にも同じことをすすめた。
「稼ぎたければおとなしくしてろ」
「3位は死守しろ」
目の前で息子が禁令を乗り越えていく。
父の判断が果たして正しいものなのか。
鈴木の神がかったダンスは観るものに問いかける。
審査員たちも、逆に審査される側になる。
・・・こんなに素晴らしいダンスを観て、お前たちはどう反応するのか?
・・・ダンスのために生きるのか、自分の地位や収入のために生きるのか?
自分たちが気にしているしがらみは大事なものなのか?
審査員たちは当惑する。
決勝で世界2位のガブを取り込む
決勝戦はスズキとアルとガブでみつどもえの戦いになる。
スズキの変化に世界2位のガブリエルも驚いている
ガブは「クールで洗練された個性派」だ。
貧しい環境に生まれながら、ひたすら自分を磨いた。
奨学金で大学へ通い、財団のダンス特待生となった。
恵まれた体格と完璧に整えられた知性。
ガブが踊ると非日常の世界が現れる。
「クーラーでガンガンに冷えた、音がめっちゃいい箱(クラブ)」
杉木は鈴木にガブの欠点を教えた。
「彼はいつも自分の完成形を目指しているんです」
順位はどうでもいいと思っている。
スタイリッシュで独特な表現力がある。
ガブ本人がインテリでソフィスティケイトされた人間だ。
自分自身だけを見つめている。
他人の評価を求めないのはガブの力の根源だが、同時に限界でもある。
強い相手を踏みにじる快感に杉木は欲情する。
いまフロアの上でラテン鈴木もガブに欲情している。
ガブに手をのばし、自分の踊りに取り込もうとしている。
ガブだけではない。
鈴木が支配したいのは会場全体だ。
「すべてを俺の鼓動で目覚めさせて」
「リズムで、呼吸で、操る」
フロア全体が鈴木に一体化しそうになる。
「これが支配する感覚」
チャンピオンのアルは楽しそうだ。
鈴木の放射する力を受け入れて、さらに増幅して踊ることができる。
アルが鈴木に教えた感覚がかえってきているのがうれしい。
フロア全体が強烈なオーラに覆われる。
ガブが取り込まれて自分を見失う。
鈴木にペースをみだされた。
以前とは違う「強い信念」を鈴木に感じている。
10ダンス6巻の発売日は3月18日
特装版がまもなく発売です。