キスから先を拒絶する杉木先生
いつもの公園でやっと鈴木先生を発見した。
かけよる杉木先生。
ふたりはたっぷりとキスする。
鈴木が杉木の首を抱き、杉木は鈴木の肩を抱く。
どちらも笑顔。
鈴木先生はさらに先へ進もうとする。
杉木を木に押しつけ、腕をつかむ。
「鈴木先生。人が・・・」
公園の中なのだ。
鈴木は気にしない。
ためらう杉木先生をおさえつけた。
「会えなくて息止まんのかと思った」
杉木の腕を後ろ手にまとめ、胸に手をいれる。
それから首にキス。
反射的に杉木先生が抵抗する。
こぶしを身体にはさみ、鈴木を押しのけた。
「あなた、男とはできないんでしょ?」
拒否だ。
こぶしを握ったまま身体の距離をとる。
白けた時間が流れる。
「そりゃねえよ」
ようやく鈴木が手をひく。
杉木先生の表情が冷たすぎる。
鈴木にしてみれば悲しすぎる。
あいたくて一晩中走り回ったのに、やっと会えたのに。
キスしたときは幸福だった。
なぜか杉木先生からの説教タイム
ふたりは喫茶店にはいった。
なぜか杉木先生からの説教タイムがはじまる。
次の世界大会に向けてどういう対策を取るべきかのアドバイスだ。
「それさぁ。わざわざカフェに連れ込んでまで言うこと?」
鈴木はむっとする。
杉木先生だって説教などしたいわけではない。
それでも自分を止められない。
素直な気持ちに向き合うことができない。
杉木先生ほどの人がコントロールを失っている。
好きな女の子に意地悪をする小学生のようだ。
鈴木への恋愛感情にどう対処していいか分からない。
杉木先生はダンスの分析に逃げ込んだ。
昨日の競技会で鈴木の良かったところはなにか。
アルが1位だったのはなぜか。
今後どう鍛え上げれば良いのか。
ほんとうに言いたかったのは別なこと。
(僕はさっきまで嬉しかったはずだ)
(早く彼に会いたかったのに)
杉木は鈴木の手の感触を思い出す。
(頭が混乱する)
混乱したまま鈴木に宣言してしまった。
「僕は10ダンスであなたのライバルになる」
「その程度のレベルじゃ困るんです」
アーニーに恋愛相談
帰宅して杉木先生は落ち込む。
気分が切り替わらない。
思い余ってアーニーに電話した。
学生時代からの友人。
ゲイで杉木に恋していたやつだ。
アーニーはキレる。
杉木の感情を即座に理解してしまったからだ。
杉木は鈴木に恋している。
しかも初恋。
鈴木は「ダンスの神」だ。
ダンスで壁にぶつかっていた杉木を救ってくれた。
いままで杉木先生は愛されることがあっても、愛することがなかった。
アーニーにとって、
房ちゃんの旦那にとって、
『ダンスウィズ』の向井くんにとって、
モダンチャンピオンのジュリオにとって、
杉木先生は絶対的なヒーローだった。
太陽みたいに中心にいてまわりを照らす存在。
鈴木はさらに大きな太陽なのだ。
杉木に引き上げられて、今まで以上に大きくなろうとしている。
成長の過程で杉木を吸収しようとしている。
アーニーは杉木に説明する
「君は受け身になれる要素が何ひとつない」
それなのに鈴木は杉木を受け身にしようとした。
「それが君の混乱を生んだんだ」
双方ともヒーローでありながら、相手を受け入れることは不可能なのか。
(すべて僕のものにしたい)
(お互いを合わせて1人の存在になりたい)
杉木先生はふとんのなかで自問する。
10ダンス6巻の発売日は3月18日
特装版がまもなく発売です。