ムラサキが風紀委員にひじ打ち
ムラサキがイメージをふくらませる。
「ダイヤモンドの風」となって風紀委員の胸にひじを入れた。
体全体に力が衝撃的につたわる。
ムラサキの攻撃はコミュニケーションでもある。
言葉をかわすかのように打撃をかえす。
風紀委員は全身の感覚でムラサキのひじ打ちを味わった。
かつては知っていたのに
今この瞬間まで忘れていたのか
万死に値する
子供の頃はわかっていた。
動物とおなじくコミュニケーションがとれた。
言葉だけが会話ではない。
「風紀委員」という立場を捨てて
ドラゴ赤太郎は今、ムラサキとコミュニケーションしている。
ただのケンカではなく、ふたりの交流なのだ。
マリンちゃんの治癒
ムラサキと赤太郎のやり取りは意外な効果をもたらす。
マリンちゃんをいやしたのだ。
マリンちゃんははっきりとみた。
ムラサキから赤太郎へ「幽霊のようなもの」がはいっていった。
マリンちゃんも病んでいる。
幻肢痛に似た感覚に苦しんでいる。
境界をはみだすことに、マリンちゃんは苦痛を感じる。
偏執的なほどにルールにこだわる異常な性癖がぬけない。
ムラサキから赤太郎へはいった「幽霊のようなもの」
それはマリンちゃんをいやした。
痛みからの解放。
マリンが長年苛まれた幻の痛みが嘘のように消失した
マリンちゃんの表情が激変した。
人間離れした妖怪じみた顔が
少女の表情になって涙を流している。
幻肢痛の治療
奇跡のようにマリンちゃんはいやされた。
他人が打撃を受ける姿をみて、痛みから解放された。
不思議な現象だ。
「幻肢痛」でも同じようなことがある。
失った手足が痛む場合、処置のしようがない。
ないはずの手足が傷んでも、物理的なケアは不可能だ。
しかし鏡を見ることで「幻肢痛」は緩和されるという。
存在しない腕を見ることで痛みがやわらぐ。
同じことが他人の体でも起こる。
他人がいたわられるのを見るだけで自分がいやされる。
不思議な現象だ。
赤太郎が打撃を受けるのを見て
マリンちゃんは開放された。
言葉では捉えられないコミュニケーション
マリンちゃんは自動的に発言する。
-ムラサキのやったことは暴力行為だ。
-学校ではあってはならないこと。
-処罰すべき行為である。
まったく正しい。
言葉だけ見れば、非の打ち所がない。
しかし内容は完全に間違っている。
マリンちゃん自身があやまりに気づいている。
ムラサキのやったことは高次のコミュニケーション。
同時にドラゴとマリンちゃんに対するいやしだった。
ドラゴ赤太郎が必死で訂正する。
「私は女生徒に暴力を振るわれたりしていない」
「なによりも私がそんなことを認めることができない」
むちゃくちゃな論理だ。
しかし圧倒的にただしい。
言葉では説明しづらい理屈、
マンガでにこそふさわしい表現内容だ。