マックスとのパトロン条件交渉
マックスの自己紹介をきいて杉木先生も鈴木先生もキョトンとした。
いきなりパトロンと言われても鈴木にはなんのことだかわからない。
杉木先生は事態をすぐに理解するが、重大な誤解を発見する。
金持ちマックスに支援してほしいのは、ラテン鈴木の方だ。
マックスは杉木先生ばっかりアプローチするが今すぐ修正しなければならない。
じっさいマックスの好みは杉木先生だ。
鈴木に興味はない。
本当のところ、ダンスにすら興味がない。
杉木先生を手に入れられれば金などいくらでも出しそうだ。
マックスの好みのタイプ・・・強い意志を持った美しい東洋人。
杉木先生はマックスに鈴木を売り込む。
マックスの倒錯的な趣味も意に介さない。
すべては鈴木を世界の舞台に押し上げるための道具である。
条件交渉をまとめてから杉木先生はようやく鈴木を振り返る。
鈴木の意向を確かめずに話を進めてしまった。
杉木先生は反省した。
マックスとの厳しいやりとりを済ませて
鈴木の気持ちを思いやる余裕を取り戻したのだ。
「・・・いいですか?鈴木先生」
うってかわってためらいがちな表情を見せる杉木先生。
鈴木は状況を理解している。
こういうときのカンがいいのだ。
本能で判断できる。
杉木先生のお膳立てにのって世界を目指す気まんまんである。
ファビオから鈴木へアドバイス
夜に鈴木はファビオと電話する。
ファビオはファッションデザイナーだ。
鈴木の衣装を担当する。
ラテンダンスのもとチャンピオン。
杉木先生の紹介で鈴木とつながった。
ファビオは鈴木を気に入っている。
いまや鈴木にはスポンサーが付いて
世界大会に進出する状況が整いつつある。
話が進むにつれて杉木先生の意図が明らかになってきた。
これは壮大なスズキ・シンヤ・プロジェクトである。
杉木先生がすべて入念に計画している。
ブラックプールで鈴木とテーブルついたメンバーは明確な役割があったのだ。
ニーノ・ツォルチ:競技ダンス界へのコーディネーター
ファビオ・キャバレリ:ファッション担当
ルーカス・ガルボ:スポンサー手配、セレブへの宣伝企画
ノーマン・オーウェン:鈴木へのモダンダンス指導
アンジェラ・オーウェン:アキへのモダンダンス指導
スズキ・シンヤプロジェクトの根本にいるのは杉木先生
ファビオとの会話で杉木先生の意図がようやく見えてきた。
鈴木はいまだいじな転換期に来ている。
ダンスだけでは世界に登ることはできない。
杉木先生は環境を整えてくれたのだ。
杉木先生のスタジオで2人は練習する。
以前に発見した通じ合いの感覚をさがして踊っている。
暗闇の中で手探りしているような感覚だ。
ほんの一瞬だけ稲妻のようなひらめきが2人の間を流れた。
スズキ・シンヤ・プロジェクトの根源にあるのはこの感覚だ。
類まれなダンスの資質をもつ杉木先生だからこそ
鈴木の価値を理解し、全力で支援プロジェクトを立ち上げたのだ。
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