本能はいつも正しい。
潤平(じゅんぺい)は友だちに
バレエを習っていることをカミングアウトする。
踊りながら。
潤平が言葉は、ぜんぜん意味が分からない。
一生懸命じぶんの気持ちを説明するが。
「俺さっ・・・ヘッタクソ!!
バレエさぁっ!!!
でも、うまくなりたくてっ・・・
サッカー部、辞めるし・・・
兵ちゃんとバンドもやれない」
(ジョージ朝倉『ダンス・ダンス・ダンスール』第2巻 第4幕)
バレエはすごいと、本当はずっと思っていた。
でも自分がやるのはかっこ悪い。
男らしくない。
バレエをやったら友だちと一緒にいられなくなるし、
学校の仲間とも、ジークンドーの先生たちともやっていけなくなる。
いまの中二の幸せを捨てられなくて
こっそりとバレエの練習を続けていた。
どっちにもいけず、もんもんとして踏み出せない。
流鶯(るおう)の踊りはすごかった。
裸足で踊りきってしまう。
潤平はそれを見て思わず泣いててしまう。
言葉では説明できない衝動。
バレエをやることに決めた。
このまま仲間と楽しく暮らして
普通に進学して、就職して生きるのも人生。
ここでバレエに挑戦して必死に生きるのも人生。
安全な生き方なんてない。
大人になって振り返れば、冷静にそう考えられるかもしれない。
普通の生活を選んでもリスクはなくならないし
挑戦したら死ぬわけでもない。
生きることを楽しめるのは挑戦のほうだ。
というか、いま自分はバレエをやりたい。
単純にそう思った。
潤平は本能でそう判断した。
そして本能はいつも正しい。