潤平が教室に通い始めて一週間になる。
バレエに夢中だ。
昼間も頭のなかでレッスンの復習をしている。
授業そっちのけで動画をこっそり研究。
バレエと学校生活
放課後、レッスンへ急ぐとちゅうクラスメートが呼び止める。
部活をすっかりサボっていたからだ。
そこに都がやってきてあせる。
バレエのことがばれたらまずい。
はずかしい。
潤平は学校生活を大事にしている。
かっこよく、人気者でいたい。
友だちづきあいは重要だ。
都の引力に逆らって、部活へ行くことにした。
男子どうしのめんどくさい関係
サッカー部には幼なじみの兵ちゃんがいる。
兵ちゃんはクラスメートをいじめている。
学校の友人関係内で上のポジションをとるためだ。
ちいさいころ潤平にいじめられ、
毎日いやな思いをさせられた。
いまだにそのことを持ち出しておっかぶせてくる。
男子の世界はマウンティング合戦だ。
いじめられたやつは学校に来なくなる。
弱肉強食。
友だちと遊ぶのは楽しいが、
微妙な争いで優位をとらなければやっていけない。
バレエを習っていることがばれたら、
いままでの人間関係を失う。
今年もサッカー部の合宿に行こう、と思う。
どっちか選ばなければ
一週間ぶりの部活が終わり
潤平はバレエスタジオに向かう。
レッスン室は別世界だ。
レオタードを着た女子たちでいっぱいだ。
とても耐えられない。
まだ14歳。中二男子なのだ。
ひとりで柔軟体操をしている潤平は気づいた。
バレエの発表会とサッカー部の合宿がバッティングしている。
どちらか片方にしかいけない。
だいたい学校でのつきあいを危険にさらして
バレエをとるなんてことができるのか?
だいじな何かを捨てて、もっとだいじな何かを選ぶ。
むずかしい決断だ。
たいていの人は現状維持で済ませるが、
潤平はどうする?