今回はぐっと恋愛の回。
密会
深夜にホテルの玄関脇で
潤平と都はおしゃべりを始める。
ファミレスの後こっそり抜け出してきた。
もしかしたら待ってるかもと、
行ってみたら、都がいた。
エレベーターのなかで待っていてくれた。
言いたいことがたくさんあるのに
お互いどうしていいかわからん。
そのまま黙って降りてきた。
外の自販機のところまで
「ラブラブだね！黒島さんと」
にこにこしている。
優しいからこんな言い方になる。
「ちょっと安心した。楽しそうで」
嫉妬しているのか？
馬鹿にしてるのか？
いい人っぽい話し方に潤平はイラッとする。
うしろめたさと、いらだちと。
それなのに目の前の都は可愛い。
どう話せばいいんだ？
結局ふたりの共通の話題は
るおうのことだ。
ワガノワ・プリ出場の経緯
千鶴がロシアから呼んだ先生が、
るおうを推薦してくれた。
ワガノワ・プリで１位ならロシア留学。
まるで飛び級だ。
そんなコースもあったとは･･･。
都のかけられた呪い
都は、母親の千鶴に認められたい。
母はバレエ第一の人だから、
バレエで注目されたい。
それなのに、見込みは薄い、
と切り捨てられている。
スタイルも顔もいいのに
もともと闘争心の薄い性格だ。
都は、才能あふれるるおうがうらやましい。
潤平がうらやましい。
夏姫のように潤平と踊りたい。
子どもは、母親に注目されたいものだ。
だから、るおうから離れられない。
るおうも同じ孤独を持っている。
愛されたい。
祖母からは決して
ほめられることがなかった。
潤平は都を見てくれたのだ。
はじめに潤平を見つけたのは都だ。
学校での潤平を見て、いても立ってもいられなくなって
バレエの道に誘った。
潤平はドキドキしながらついてきた。
練習に打ち込んで、キラキラした眼差しで見つめてきた。
「好き」の気持ちがあふれるようなパ・ド・ドゥだった。
「だからっ、まさか付き合えてっ、
めっちゃ嬉しくて、嬉しくて嬉しくて･･･
付き合ってる間、ほんとに短かったけど
ほんとにワクワクして･･･
世界が、木々の葉っぱ一枚一枚が、
全てが輝いて美しかったよ！」
たまらんわ。