すじがき無視
役にのめり込んだ潤平が暴走する。
立ち上がったのだ。
王子復活である。
舞台が完了するはずだったのに終わらない。
自分の気持ちが納得いかないから。
・・・悪魔に負けて死ぬわけにはいかない。
勝手なアドリブを始めた。
ステージ上はパニックである。
死んだはずのキャラが勝手に動き始めたからだ。
共演のるおうは、なんとか無事に
舞台を終了させなければならない。
舞台袖から指示が飛ぶ。
「殺せ」
・・・こんな奴と同じ舞台に立ちたくなかった・・・
踊りながら、るおうは潤平へ必死の提案をする。
「次、放り出したら、死ねよ・・・?」
ところが潤平は死なない。
またつかみかかってくる。
るおうは潤平を躱して跳ぶ。
技を見せながら必死のかけっこだ。
めちゃくちゃだ。
るおうのほうが速い。上手い。
倒れた潤平の前でポーズをとってついに終了する。
と思いきや、潤平が再び立ち上がる。
「・・・まだっ、納得でき・・・ない・・・」
めちゃくちゃである。
クラシックとアドリブ
クラシックバレエの人はアドリブしない。
クラシック音楽と一緒だ。
たとえば演奏会で、
共演者が勝手なことを始めたら悲劇だ。
気持ちがもりあがって、まだまだ続けたいから
曲が終わりそうだけど勝手に歌いはじめる。
なんとか終われるように適当に
共演者が音を合わせる。
気分のままに引き延ばされる音楽。
共演者は災難である。
準備した練習を放棄されて
いきなりステージで、こんなことやられたら発狂する。