兵ちゃんとヌッくんの話が続く。
兵太の満足
兵太はヌッくんが学校に来てくれて嬉しい。
なんでか好きなのだ。
SNS上で女子となって
ヌッくんをもっと喜ばしてやりたい。
画像を追加するために女装する。
キモいわ。
なんでそこまでするんだ?
潤平へのあこがれ
女装した兵ちゃんは、
子どもの頃を思い出す。
潤平を好きだった。
兵ちゃんはいじられキャラだが、
潤平はクラスの人気者だ。
うらやましい。
仲良くなりたい。
潤平の家に行って一緒に映画を見た。
『時計仕掛けのオレンジ』である。
小学生にしては刺激的な映画だ。
潤平と兵太は感動する。
クラスの中でこの感動を共有するのはふたりだけだ。
それが嬉しかった。
「俺、潤平になりたかったんだっけ・・・」
それから兵ちゃんは、
潤平をめざして現在のキャラを作った。
潤平はもともと「好奇心旺盛で
無邪気で自信があって、
他人に嫌われるなんて知らない
14歳の王子」である。
素直だが無神経な潤平のとなりで、
兵ちゃんは屈折していく。
潤平の陰のような存在だ。
ヌッくんふたたび欠席
ヌッくんは失恋した。
町で「SNS上の恋人」に出会ったのだ。
駆け寄って、おまけフィギュアを捧げるヌッくん。
「恋人」は、当惑する。
ヌッくんはすべてを悟った。
だまされた。
これは兵太の姉だ。
姉の画像を使って兵太が近付いてきたのだ。
自分はうかうかと告白したあげく、
その気になって登校し、兵太をなぐった。
すべて兵太の手のひらの上だった。
ヌッくんは絶望して、ふたたび部屋に閉じこもる。
SNSで異常を感じた兵太はヌッくん家を訪問した。
ヌッくんは兵太をはじめて部屋に通す。
鍵をかけ、ナイフを取り出した。
「お前だけは、絶対に嫌だった」
絶叫である。
フラれた怒りと、だまされた怒りと、いじめられた怒り。
積年の恨みが凝集している。