潤平、尼崎へ
あっという間にコンクールだ。
ホームで待つ中村先生にメッセージ。
「向かいのホームを見て」
物陰から潤平が登場する。
「出方どうっすか?」
「“ニコラス”かと思った!?」
お茶目である。
どこまで本気か分からん。
でも本番を前に高揚している。
YAGPに参加するのだ。
初めてのコンクール。
しかもけっこう大きな国際大会である。
直前のアドバイス
コンクールはどうしたら勝てるのか。
潤平は、手がかりを求めて経験者に話を聞いてみた。
「どいつもこいつもろくなアドバイスねーし」
様子がわからない。
るおうも都も姿を見ないし・・・
しかも、振り付けは難易度さげ下げ。
ニコラスにはほど遠い。
俺はやれるのか?
弁当を食いながら中村先生がアドバイスする。
この振りでニコラスが踊っているのを想像しろ。
会場の雰囲気
尼崎アルカイックホールはバレエ一色である。
コンクール期間中、日本中のバレエ関係者が集まる。
「何ここ・・・バレエの国・・・??」
「バレエの妖精さんしかいないヨ」
「俺、大丈夫!?」
寿(ことぶき)が来るのをみて潤平はほっとする。
寿の3頭身が潤平をおちつかせてくれた。
いいやつだ。
こういうアウェイにいるときに知り合いがいるのは心強い。
トイレにいって落ち着けと中村先生から指示される。
緊張している自分をコントロールする訓練だ。
トイレの鏡に向かい潤平は“ニコラス”を呼び出す。
あこがれのダンサー。
ニコラスの幻影と対話して自分を確かめる。
ニコラスだけではない。
鏡の中から、潤平の味方がたくさん見守ってくれる。
死んだ父親から中村先生、岩井先生、千鶴、綾子。
「俺の誇り」
「指針」
「自信」
「自慢」
独りではない。