バレエ発表会は学芸会か?
発表会のリハーサル当日。
潤平はおおきな違和感を感じる。
こんなのかっこ悪い。
素直な気持ちである。
そして遠慮なく口に出してしまうたちだ。
「つっまんねー話」
バレエのあらすじなんて
だいたいつまらん。
リハーサルでも基本ばかり
ステージでリハーサルが始まる。
るおうはかっこいい。
踊りを見た女子たちは
きゃあきゃあ言う。
面白くない。
潤平のほうは相変わらず。
基礎的なことばかり注意される。
「潤平ッ」
「もっと引っぱって」
「指先っ」
「つま先っ」
「ひざぁぁぁっ」
つまらん。
俺は下手だ。
こんなストーリーで
こんな俺が出てったら、
「客にとって拷問じゃねーか?」
控え室で不安を口にすると
千鶴に一喝された。
「あんたはまだその段階じゃあないの」
「基本がないがしろだと
そこが目について白けてしまう」
「それこそ学芸会以下というか」
「問題外」
都の存在が舞台を変える?
それでも本番は来るのだ。
千鶴からメンバーたちへ
最後の指導がある。
「このメンバーみんなで
この『白鳥』を踊れるのは
この本番で最後です」
「だから、思い切り楽しんで来てね」
舞台はいちど限り。
人生のようだ。
自分のいまある力で
最大限に味わうこと。
いちど限りの命を全うする。
ステージに向かう足取りは
処刑場に向かうような重さがあるが
同時に、わくわくもある。
潤平は都に肩を貸して階段を進む。
都は照れているらしい。
「わたし、男の子の真剣な眼差しを
あんなにはっきり向けられたの、
初めてだから・・・」
階段で見つめ合うふたり。
都は潤平を好きなのか?
これからステージ上で
「姫と王子」になるのだ。
「楽しもうね・・・」
「舞台でね・・・」
「王子様」
恋の感情が盛り上がる。