フランツの黄金の口説きパターン
これが、ソシアルダンスのおいしいところよ。
茉莉花(まりか)はディスコでフランツに再会する。
フランツはあざとい。
先回は英語とドイツ語しか話さなかったのに
今回は、流ちょうな日本語で話しかける。
ギャップで茉莉花の関心を持って行ってしまう。
日本語ボキャブラリーの豊富さを披露し、
親友の小夜子(さよこ)から、質問させる。
「ずいぶん長く日本にいらっしゃるの?」
もちろん、日本に来てまだ2年。
頭がよくてあっという間に日本語をおぼえたのだ。
女子高生ふたりを魅了完了。
距離を詰めるフランツ
「茉莉花ちゃん・・・」
「きれいな名ね」
茉莉花は、ちゃん付けで呼ばれてきゅんとする。
「ぼくと踊っていただけますか?茉莉花ちゃん」
フランツの「ちゃん付け」攻撃。
小夜子の申し出を断り、さらに攻撃。
「ごめんなさいね 小夜子さん」(「さん」付けで切り捨て)
とどめの一撃。
「ぼくはね ほんというと
茉莉花ちゃんにもう一度会いたくて
毎晩ここにきていたのね」
「どうしても茉莉花ちゃんとおどりたいのね
せめて一曲だけでも・・・」
手を握ってくる。
茉莉花初めての社交ダンス
ふたりはブルースを踊りはじめる。
夢のような体験。
「胸をはって 下を見ないで
ぼくの足と踊らないでね」
「茉莉花ちゃんはぼくのパートナーなんだから
ぼくと踊って」
フランツはダンスがとんでもなく上手い。
しかも金髪、青い目だ。
洗練された言葉で茉莉花をかきたて、気持ちよくさせる。
社交ダンスの喜びが、ここだけでもう想像できる。
「時間よ!」
茉莉花は小夜子に言われて帰らねばならない。
ふたりともお嬢様なので、門限でもあるのか。
こんなふうに中断されて茉莉花はすっかり舞い上がる。
次はワルツを教えてもらうって約束したしと。
フランツはそれっきり姿をあらわさない。
シンデレラに逃げられた王子のように、茉莉花は落ち着かない。
手がかりをもとめて、社交ダンスの本を手に取ったりするのだ。
社交ダンスを習う価値があると思うわ。
踊れたら素敵な世界が見られるって思うもん。