やらせのシナリオが判明
でもワクワクは止まらない。
すべては、バレエ本公演に向けての宣伝作戦だった。
TVドキュメンタリー「熱血大陸」で生徒公演の放送がじつは決まっていたのだ。
番組を盛り上げるため、もともとの王子役ふたりを競わせる。
さらに元ロイヤルバレエ団の天才ダンサーを客演させる。
にぎやかし要員で海咲と潤平にもやらせたい。
京都の老舗呉服店の長男、海咲と
母子家庭の潤平だ。
綾子先生は、潤平と海咲の性格を知っている。
ふたりを自分から王子役に立候補させた。
計算通り。
「これ 追いつけんのかなって・・・」
もともとの王子役はすでに踊れるようになっているが、
海咲はつらい。パ・ド・ドゥに苦戦している。
潤平は、はなから問題外で立ち位置から調整し直しだ。
テレビカメラがやってきて、海咲が感づく。
やらせだ。
そして潤平と海咲はにぎやかし要員だ。
海咲は激怒する。
潤平にぶちまける。
「番組盛り上げるためにデキレースのコマにされてんねん、
結局あの二人が王子やるんやろ?!」
ぎゃくに潤平は大興奮で喜んでいる。
じぶんが大成功するイメージを見ている。
かっこよくて楽しくてたまらない。
「そんな、シナリオ、くつがえして、しかも、
それ撮られて放映されちゃったり・・・!!!
やっば! 鼻血出そっっ。」
潤平がめちゃくちゃ可愛い。
翌日、潤平はサングラスをかけて練習に来る。
ヨージヤマモト風の黒い服だ。
母ちゃんのファストファッションアイテムを組み合わせきた。
TVにかっこよく映るため。
潤平のサクセスストーリーが始まっている。
海咲はトレンチコートで来た。
「王子役は俺のもんや」
海咲もめちゃくちゃ可愛いわ。
ポジティブなのはいいことだ。
立候補すれば、最低でもテレビには映れる。
やってみればリスクは意外に小さいことが多い。