「どうしてスタジオこないの?」
都がソデを引っぱりながら問い詰めるが
潤平は逃げる。
発表会への出演もことわってしまう。
ここ数日バレエに通うのをやめていた。
悔しいからだ。
自宅で練習しているとるおうの踊りが目に浮かぶ。
美しいバレエの動き。
自分はうまいと思っていたのに、ほど遠い。
千鶴はほめてくれた、
お前はバレエダンサーになる人間だと。
しかし今更はじめたって遅いというほうがまともな見方だ。
るおうは何年もの練習を通してあの動きを身につけたのだ。
都にはだまされた。
好きだったのに。
それでも潤平は自主レッスンをやめられない。
練習しながら感情が揺れまくる。
どう考えたって主役はるおうではないか。
男子一生の課題
今日もレッスンへは行かない。
友だちと屋上でたむろしている。
いや、たむろする気になれず離れて空を眺めている。
俺は王子役に向かないのか。
男としてだめなんじゃないか。
潤平はバレエをとおして、男子一生のテーマに向き合う。
必死で仲間の黒島(女子)へ助けを求めた。
黒島の回答は的確だった。
パンツを見せてくれたのだ!
「元気出た?」
「特別だかんねーっ」
第10幕いちばんの見せ場である。
パンツを馬鹿にしてはいけない。
これは女子からのメッセージなのだ。
あんたは男としてイケていると。
私はあんたをいちばんと認めていると。
女子からの肯定は、自信の源だ。
言葉を信じられなくなっているときに
パンツは絶対的な説得力を持つのだ。
バレエだけが世界ではない。
そして男友達からの肯定
放課後、潤平は兵ちゃんと楽器店へ向かう。
ワンダーランドだ。
あこがれの楽器に触るのは楽しい。
店のおやじさんは親切にいろいろ教えてくれた。
兵ちゃんは大喜びだ。
潤平を好きなのだ。
バレエでなくても、たくさんの可能性が自分にはある。
ジークンドーだって。
世界が潤平を待っている。
いったいこの先どうやったら
全てを捨ててバレエにいけるのか?
潤平の人生を引きずっていくライバルがやってくる。
るおう初登校である。
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