初回のレッスンが始まった。
10ダンスでトップをとるため
お互いに専門分野を教えあう約束である。
スタンダードは男性が重要。
まずは杉木から教える。
ラテンチャンピオンなのに鈴木はスタンダードがへただ。
フロアをまともに進めずこけてしまう。
鈴木ペアはD級なのだ。
SA→A→B→C→D→N
下から二番目の階級だ。
ラテンはチャンピオンなのに。
しかし杉木は揺るがない。
「僕が大丈夫と言えば大丈夫なんです」
そして耳元で叱責する。
「男同士でもあんな所が接触するなんてあり得ませんから!!」
「早くホールドを覚えて!」
杉木が女役となって踊りはじめる。
スタンダードは心地よい。
優越感である。
パートナーの動きを支配している。
「スタンダードの女なんてリーダーの言いなりじゃん」
杉木からの指示で鈴木はターンするが、またもやこける。
股間があたり怒る杉木。
スタンダードは男性のリードが重要である。
ジェントリーなリードで女性は綺麗に気持ちよく動ける。
ラテンのキモは魅惑の腰つき。
スタンダードの帝王は、壊滅的にラテンに向いていない。
下手ではないが。
ラテンチャンピオンの鈴木は、まずヒップアクションから見せる。
エイトロールである
胸から腹まで露出し、マジックで線を引く。
腕の動きを受けて、肩甲骨が動く。
肩甲骨の流れが背中をうねらせ、
脇下から腰へローテーション。
後ろ足へ体重移動すると腰がうねる。
魅惑の腰つき。
背中が美しい。
腹筋も胸筋も美しかった。
鈴木は実際に体を見せて教える。
頭でなく体で覚えさせる。
目の前で動きを見るのがいちばん正確でわかりやすい。
ラテンに必要な表情
鈴木の動きをコピーしながら、杉木が問いかける。
「あなたゲイなんですか?」
怒る鈴木へ理由を説明する杉木。
・・・踊るときの顔が、物欲しそうで卑猥だったから。
クールである。
しかしラテンでは表情が大事なのだ。
鈴木はさらにヤニ下がった顔をしてみせる。
ラテンをものにしたければ杉木もセクシーな表情をしなければ。
「一番前を走るのが好きなんですよ」
終電に間に合うようそれぞれのパートナーは帰宅。
鈴木はスタジオに帰ってきた。
始発を待って眠る横で、杉木は練習する。
毎日、この時間に練習しているのだ。
競走馬のようによそ見せずにまっすぐ走っていたい。
全力でトップを目指したい。
ワールドチャンピオンシップ1位をとりたい。
毎年2位をとりつづけている。
八百長のせいで1位になれないという話もある。
しかし観客にブーイングがおこり、順位が覆るほどの実力があれば・・・。
いままでも実績を積み上げてきたが、さらに上へ行く。
触発されて鈴木も練習を始める。
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