夏姫の練習
潤平は携帯で撮影をはじめる。
夏姫は画になる。
歯を食いしばって踊る。
小さな身体から炎があがっているようだ。
「誰よりも上手くないと気が済まない。
死にたくなる」
だからレッスン終了後も
夏姫はひとりで練習する。
「努力でどうにかなることなら簡単!
いくらでもする」
そういって毎回、居残りをするのだ。
バレエに対する姿勢が根本から違う。
いいダンサーである。
潤平は自宅に帰って反省する。
夏姫はかっこよかった。
自分が映画監督なら夏姫を追いかけて撮りたい。
しかし自分は夏姫のパートナーである。
どうすればいい?
ひとまずいつものように
動画をみて研究である。
譲歩・・・方針を変更
翌朝5日目になった。
潤平の結論は、黒子に徹すること。
夏姫に100%合わせる。
邪魔はしない。
少し合うようになった気がするが
夏姫は全否定してくる。
「もうやらない」
これだったらひとりで踊るほうが楽しい。
洋舞祭りの潤平のほうがずっと面白かった。
ピルエット勝負の時はなんで無難にまとめたの?
潤平にだって事情はある。
いまは上手くなりたいのだ。
「めちゃくちゃにやるのが恥ずかしくなっちゃった」
動画を再現?
潤平だってパドドゥをバリバリ踊りたい。
きのう見た動画みたいに。
こんなやつ↓
夏姫も大好きな動画だった。
競って楽しんで、こんなに踊れたら最高だ。
潤平がマネっこをはじめ、夏姫を挑発する。
夏姫も動画をみて振りは覚えている。
挑発にのってきた。
ふたりで「パリの炎」の再現である。
こんなのできるわけないけど。
パドドゥ効果?
まねっこ始めると、事件が起こった。
自分の身体が予想以上に動き出したのだ。
ふたりで踊るときの化学反応か?