小学生の都とるおう
初めて会うるおうは、色白で裸だった。
ロシア人とのクオーターだ。
都は休日にこっそりるおうのうちへ行くようになる。
禁じられたお菓子をもって。
それからふたりで遊ぶ。
都がピアノを弾いて、るおうが踊る。
バレエが遊びだ。
幼いふたりが可愛い。
るおうの受けた訓練
るおうは祖母からバレエを習っている。
というか強制的に仕込まれている。
祖母のレッスンは恐ろしい。
昔の先生はあんな人がいたわ。
ヒステリックで容赦なく突っ込んでくる。
平手打ちをして体罰を加えるし、
手足をつかんで無理矢理のばす。
完璧だった母親と比較して
るおうを徹底的に否定する。
しかも派手な技を禁じて基礎訓練しかさせない。
「柔軟と正しく立つこと」に終始する。
修行のようなレッスンだ。
おかげでるおうは精神的に不安定だ。
睡眠薬をいきなり口に放り込んだりする。
都の気をひくために。
あぶなっかしくて見ていられない。
るおうにあらわれた訓練の効果
修行のようなレッスンはじょじょに実を結んできた。
「両手バーレッスン」が増えた。
るおうはしなやかに踊る。
音楽に寄り添っている。
「こうまでバレエという国の住人たる空気を纏う子はいない」
るおうに漂う本物のオーラに、都はとまどう。
自分は本物ではない。
バレエスクールでも本物の子はぜんぜん違う。
バーの前に立っただけで分かる。
都の母も本物だ。
そして都は母から「可能性の低い子」と見られている。
都はるおうがまぶしい。
るおうの前では踊りづらくなる。
るおうのほうは都の気持ちをぜんぜん気にしていない。
ロシアのトップを目指して
踊ろうよ、と無邪気に勧めてくるのだ。
都はつらくなって、るおうの元へ行かなくなった。