暗闇に浮かび上がる潤平
突然の停電で体育館はまっくらになる。
潤平は走り出した。
取材の記者からストロボを借りる。
「俺、プロじゃねーし」
「安定供給興味無かったわ」
決まり切ったシナリオを抜け出して
120%のウケを獲りにいくのだ。
潤平がはじめたのは「Caught」のまねっこだ。
コートはデビット・パーソンズ振り付けのバレエ。
暗闇のなかをダンサーがふわふわ浮かぶ
不思議なコンテンポラリー作品だ。
ウケるということ
暗闇の中で潤平は集中する。
子どもたちは何が起こるか期待して待っている。
音楽は学校の先生のピアノ
光は取材記者のストロボ
タイミングをはかってとびはじめる。
暗闇の中に潤平の姿がうきあがる。
まるで手品だ。
雨の音が着地音を消してくれて
ほんとに飛んでいるようだ。
子どもたちの期待感が
潤平の身体に集中する。
みんなが潤平を見つめている。
潤平の動きと子どもたちの感覚が呼応する。
バレエでウケているのだ。
これが舞台だ。
プロへの挑発
体育館が明るくなる。
照明が復旧したのだ。
潤平の姿が現実に帰ってきた。
子どもたちは拍手喝采する。
潤平は語る。
この作品を踊ったダンサーを観たとき
「ガーンと打ち抜かれちゃって」
「バレエやりたいって思ったんだ」
「光が爆ぜてバチバチドーンて」
「宇宙の爆発みたいな」
俺にとってバレエはそういうイメージなんだ。
そのままワッシーの演目を紹介する。
ワッシーはノリノリだ。
ボディービルのポーズをはさんで
サービス精神満点の踊りをする。
しかも「バレエ」の動きでも、ウケを獲る
潤平の作った流れを逃がさない。
次は「白鳥」だ。
潤平は挑発する。
「プロっしょ?お姉様方」
クラシックバレエでウケて見せろ。
実力があるならな。
こういう勝負はめっちゃ楽しい。