女としての夏姫はどうなの?
潤平は戸惑う。
夏姫の夢を見てやってしまった。
夜中にひとりでパンツを洗うのはなかなかつらい。
天の言葉を思い出して潤平は動揺してしまう。
「美人になるだろーなー」
「あ、今でもいけるな」
年上の天は、もっと自由に対処してるようだ。
今までそんな目で見たことがなかった。
潤平はそんな段階ではない。
夏姫とはバレエでかっこよく絡みたい。
ドン・キごっこ
体育館での練習でふたりはパドドゥを始める。
『ドン・キ』のアダージオだ。
難しいやつ。
すでに動画を見て振りは覚えている。
夏姫とならできるんじゃないかと潤平は期待していた。
ところがやってみるとぜんぜんうまくいかない。
夏姫は遠慮なくののしる。
いや、ののしっているわけではなく率直なのだ。
男性へ、変に配慮せず自分の要望をまっすぐに伝える。
潤平も安心して言い返せる。
はたから見たら、ののしりあい。
「もうちょっと俺を愛せよ」
思わずさけんでしまった。
世界を手に入れかけた
そもそもパドドゥは難しい。
失敗したら即ケガだ。
『ドン・キ』のアダージオなんて初心者ができるもんではない。
持ち上げてもらう女性のほうが相手をなかなか信用できず飛び込めない。
男性が失敗したら女性は床に転落してしまう。
紅乃は初心者の高校生を相手にパドドゥを踊ったことがあるという。
おそろしかった。
話を聞いていたふたりは「肩に飛び乗るリフト」にチャレンジする。
反射的に、あっさりと挑戦。
ビシッと決まりかける。
その瞬間ビジョンが見えた!
「世界を手に入れかけた!」
YAGPで踊ろう!
ふたりには光が見えた。
タイミングが合いかけた一瞬電流のようなものが流れた。
客席からの視線を集めるビジョン。
「そう!」「これ!」
「夏姫とはこれ」
リフトは失敗したが成功のイメージはしっかり掴んだ。
おもわず夏姫は叫ぶ。
「出よう、潤平」
「YAGPで踊ろう!」
黒島来襲
そこへ思いがけないやつが現れた。
セクシー女子、黒島だ。
潤平のクラスメート。
東京から長野までわざわざ来た。