銀也のダンス
蕎麦を食いに来たついでに
子どもバレエに立ち寄った銀也。
バレエ神として体育館に降臨する。
手を挙げただけで子どもらが静まる。
本物だ。
立ち姿でもう分かる。
踊りはじめるとそこは
『ドン・キ』の舞台になってしまう。
潤平はあ然とする。
自分はウケ狙いの白鳥姿だというのに。
衣装すら着けない銀也がウケている。
圧倒的にバレエを観せている。
拍手喝采する子どもたち。
銀也はバラを一本抜き取り、
バレエのポーズで女の子に捧げる。
「バレエ、楽しんで!」
女の子は一瞬で恋に落ちた表情になる。
「やっべー」
実力差に呆然とする潤平。
天も同様だ。
同じ『ドン・キ』をやられて
会場をさらわれてしまった。
オープンカーの中で
夕立のようにあっというまに
銀也は立ち去った。
「わたしも乗せてって」
夏姫もいっしょにオープンカーで帰る。
「銀也さん、これあげる」
パチもんのヨーダだ。
射的でとって潤平にあげるつもりだった。
夏姫は失恋したのだ。
車の中で涙が落ちた。
顔をくしゃくしゃにして
夏姫は泣く。
天の雲隠れ
夜のミーティングは盛り上がっている。
アンケートでは「また観たい」92%とった。
驚異の数字である。
「さっすが俺たちの銀也だよね」
すごすぎて、もはや崇拝してしまう。
反省会に潤平と天がいない。
潤平は体育館でひとり練習している。
銀也のダンスに興奮して
じっとしていられない。
「俺もぜったいあっちがいい!」
いっぽう天のほうは
銀也のダンスに打ちのめされている。
ファミレスで酔っ払っている。
女を呼び出して弱音を吐いている。
「バレエ、やめよっかなー」