キトリの取り合い
子どもバレエの最終日。
綾子はこっそり観に来てびっくりした。
「いったいどういうことかしら」
予想もしなかった景色があった。
バジルがふたり並んで踊っている。
潤平と天。
キトリを取り合う。
これはクラシックか?
まともなバレエを見せられるのか?
あり得ない光景に激怒する綾子。
その脇であわてる中村先生。
子どもバレエがたいへんなことになった。
天の復活
失踪していた天が舞台に戻って来たのだ。
モチベーションが下がり続け
「本物の天才」銀也に打ちのめされ
もうバレエは辞めようと思った。
しかし踊りたい気持ちが
ムラムラと湧き上がってきたのだ。
「紅乃さん!」
「俺、紅乃さんと踊りたくて出てきちゃった!!」
「紅乃さんは、俺と踊るべきでしょ?」
天のメイクなしだ。
衣装もそのままなのにかっこいい。
紅乃の手をとって天は気持ちが高揚する。
「観てくれ!!」
「俺の美しい女!!」
「うらやましいだろ!?」
キトリとして、つい・・・
紅乃は天の手をあたえてしまう。
舞台に出てきた天を無視するわけにはいかない。
せめて交互交互に踊ろうと思う。
しかし天のほうがやりやすい。
天は圧倒的にうまいのだ。
キトリを美しく踊れるようサポートしてくれる。
はじめは、自分と踊りたがっている
潤平と踊りたいと思った。
だけど天は今はっきりと踊りたがっている。
舞台が破綻してもかまわないくらいの気持ちで。
「ごめん潤平っっ!」
紅乃は潤平を放って、天のところに戻る。
バレエというよりコントのシチュエーション。
サプライズ
敗れた潤平は袖で泣く。
フラれた。
舞台の前で、公衆の面前で
完膚なきまでにフラれた。
だがそのおかげで舞台は盛り上がっている。
「あいちゃん!俺と『白鳥』踊って!!」
「おう!」
よい流れが生まれている。
そして終演時に空から星が降ってくる。
「また観たい」の星形アンケート用紙だ。
サプライズである。
今までの子どもたちが
潤平たちを観に来てくれた。
「もっかい観たくてまたきちゃった-」
綾子さんから課された120%の目標を達成した。
不可能をひっくり返したのだ。
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