夏姫のコンテンポラリー
潤平の来る2日前。
夏姫はすでに来ていて
コンテンポラリーの審査を受けた。
だめだった。
周りがすごかった。
「自信のなさが出てしまった」
「もっと集中しなきゃいけなかった」
「ごめんなさい・・・」
夏姫らしくない落ち込みぶりである。
そのままホテルに閉じこもった。
つづいてクラシックの予選があるが
夏姫はレッスンを休む。
練習を休むのは、はじめてだ。
自分の部屋でDVDを見ている。
るおうの母、真鶴のオーロラ姫を。
ひたすら見続けている。
けっきょくレッスンしなかった。
2日間をイメトレのみで過ごした。
夏姫のオーロラ姫
気のいい寿は夏姫を心配している。
「クラシックもヤバいんじゃないかな」
「ひきずっちゃって・・・」
夏姫は2日間レッスンしていない。
女子はレベルが高い。
決戦にあがれるのは1割程度。
しかもみんな「オーロラ姫」をやる。
倍率が高くて競争が激しい。
地味で難しい役柄だ。
夏姫は大丈夫か?
レッスンなしでいきなり動けるものなのか。
「本物はどんな状況でも決める」
かたずをのんで見守る潤平たち。
夏姫は素晴らしかった。
「かわいい・・・」
「なんだこの・・・愛されるためだけに
生まれてきたような生き物は!!」
「純粋無垢な愛らしさ、
可憐さ、上品さ・・・」
「指先から、足先から」
「幸福を振りまいて踊るのですか!?」
「眠り」のつまらんストーリーが
夏姫の踊りで説得力を持ってしまった。
寝ている女にキスしてハッピーエンド。
そんなアホな話があるか。
だがバリエーションひとつで
夏姫は納得させてしまう。
「この娘のためなら
国一つくらい一緒に眠るし
王子も一目で骨抜きになりますよね」
完璧。
別格。
るおうは別ステージに
潤平は夏姫に圧倒された。
あっけにとられる潤平に
新情報が入る。
るおうはYAGPではなく
「ワガノワ・プリ」に出ているという。
ロシアで行われるコンクール。
るおうは一足とびに海外へ行ってしまった。
勝てばバレエの本場へ直通でいける。