はじめの一歩、ワルツを習得
たたらはついにワルツを覚えた。
みんなめっちゃ褒めてくれる。
番場も仁保も、たまきさんも。
教室総出でお祝いムードだ。
抱きしめて、紙吹雪をまいて
タンバリン鳴らして喜んでくれた。
一生懸命やってたからな。
ひたすらワルツのシャドー練のみ。
「僕にできること」を繰り返した。
兵藤の練習をみたのがよかった。
たたらも、兵藤のイメージを追いかけて
毎日ひとりでフロアをまわっていたのだ。
こういう奴の上達すると素直に応援したくなる。
シャドー練のイメージは・・・
仙石から見るとたたらは下手だ。
「犬の散歩かと思ったわ」
たたらのほうが子犬である。
どうしようもない。
シャドー練をするたたらは
もっと上手かったはず・・・
イメージのなかで、
しずくを相手に踊っていたからだ。
しずくへの憧れも、たたらを動かしていた。
欲望だって、上達の燃料だ。
どんどん燃やして上手くなってしまえばいい。
三笠宮杯とは・・・
たらは高揚している。
兵藤としずくが本番で踊るのを見に行くのだ。
日本最高峰の競技ダンスの大会「三笠宮杯」である。
優勝すれば世界選手権にも出場できる。
兵藤たちは最優勝候補だ。
身近な知り合いが試合に出るのはドキドキする。
たたらが追いかけている憧れのふたりが
本気で踊るのを見られるのだ。
緊張して一週間ねむれなかったのは
たたらのほうだった。
「三笠宮杯」本番前
たたらは仙石について控え室に向かう。
ここは「戦場」だ。
一階フロアに出場者たちが待機している。
全員がダンスに時間と金を費やし
大会のために準備してきた。
試合に勝ちたい。
そのつもりで犠牲をはらってきた奴ばかりだ。
勝負の世界。
たたらもいやおうなく会場の熱気にあてられる。
中学生カップルの競技ダンス
兵藤としずくはランキング1位。
そのため2次予選から出場する。
ふたりは素晴らしい踊りを見せる。
ラテン5種目は以下の通り
1,サンバ
2,ルンバ
3,チャチャチャ
4,パソドブレ
5,ジャイブ
大人のセクシーさを見せつける踊りなのに、
中学生の兵藤としずくは、まったくひけをとらない。
セクシーさ満点。
それぞれの種目の特徴をはっきりと踊り分ける。
たたらはもう夢見心地だ。
「僕はまだワルツしか知らないんですね」
まだまだ社交ダンスをはじめたばかり。
覚えることがたくさんある。
目の前に広がる世界に興奮して立ち上がる。
トイレにいくのだ。
たたらはトイレで覚えたばかりのワルツを練習する。
「ワルツは僕のリズムだ!」
映画『Shall We Dance?』でも
トイレで踊るシーンがあった。
トイレに行くと、人は踊りたくなるのだろうか?