天平杯でガジュと対決
たたらはまことの練習できっかけをつかんだ。
相手をよく感じ取ること。
一体となって踊ることだ。
まことパートナーを組んでガジュに挑戦する。
ガジュが、しずくと組んで
残されたまこがかわいそうだから。
余計なお世話だと思うが、
たたらは大真面目である。
「ガジュさんは勝手だよ」
「残されたほうはどうしたらいいのさ!?」
ふしぎな正義感でモチベーションがあがっている。
動機はなんでもいい。
たたらはガジュを捕まえて
勝負を申し込んだ。
勝負の場は「天平杯」だ。
天平杯はスタンダードの戦い
天平杯は、群馬のローカル大会だ。
ダンス好きの鼻毛石さんが主催する非公式の大会。
種目はスタンダードのみ4種目。
ワルツとタンゴ、それに
フォックストロットとクイックステップ。
大会に向けて、仙石が特別にアドバイスしてくれる。
キモは決勝のクイックステップだ。
仙石がクイックステップを
特別に振り付けてくれる。
主催者で審査員もやる鼻毛石さんは派手好き。
決勝での一番の花形であるクイックステップを
派手に踊れば、得点をかせげる。
ポイントは「スリル」。
観客に存分にスリルを味あわせる。
たたらとまこは、どちらも小柄だから
ガジュとしずくペアには、体格で見劣りする。
しかもガジュたちは三笠宮杯の入賞者だ。
とうぜん実力差も大きすぎる。
仙石直伝の振り付けで踊り、
スリル満点の踊りで審査員を魅了する。
クイックステップで逆転するのだ。
たたらは振り付けをすぐ覚えてしまった。
しかし足りないものがある。
富士学院での練習
仙石はたたら達をダンス練習場に連れて行く。
「ここらで一番人気」
「しかも混む時間帯」
あまりにも大勢のカップルが踊っていて
たたら達はぶつかりまくる。
「台風の中みたいだ!!」
はじかれて壁際に戻されてしまった。
まともに踊れない。
仙石からは踊り続けろと活を入れられた。
「集中しろよ!!」
「勝つ気あんのか!?」
とぼとぼと、たたらは家に帰る。
玄関で靴を脱ぐと、足がボロボロだ。
踊り続けて足裏の皮が剥けたのだ。
落ち込んでいるたたらに
電話がかかってきている。
まこからだ。
まこにいたわられて、
たたらは気力を回復する。
「ありがとう」
「僕を舞台に立たせてくれて」
単純な男である。
(そこがたたらのいいところだ)
たたらは人が変わったように
積極的に、攻撃的に踊るようになった。
最後のキモである「自信と存在感」が備わったのだ。
男子にとって女子からの信頼は、
まことに効果てきめんである。
まこみたいなパートナーを得て
たたらは幸運だ。