たたらと千夏のカップル結成
明のおかげだ。
喫茶店で明が挑発したせいで
千夏に火がついた。
明と千夏はもともと
女子同士のカップル。
男子が足りないため
千夏が男役で踊っていた。
ダンスはうまいのに
千夏はやりたいことが
ずっとできなかった。
リーダーが見つからない。
女子として踊れない。
「だって私の方が背低いし」
「女の子らしいし?」
明からは上から目線。
このままでは終われない。
千夏はたたらと組んで
明を見返してやるつもりだ。
たたらと千夏は最悪のとりあわせ
たたら達は練習をはじめた。
まず目指すのはノービス戦(初心者級)だ。
うまくいかない。
男女が逆なのだ
たたらはフォローが上手い。
千夏はリードが上手い。
「もうすでに破局の危機・・・・」
ののしりあいながらの練習である。
お互いに不満がたまる。
ノービス戦のスタート
あっというまにノービス戦当日。
ふたりは会場に到着する。
会場は錦糸町マルイの最上階だ。
たたらは勝ち上がって
はやく清春たちと闘いたい。
千夏は明を見返したい。
むいている方向はバラバラだが
第一目標はおなじ。
ノービス戦突破だ。
ノービスには12組参加。
昇級するには2位以上入賞が必要だ。
明からふたたびの挑発
会場でたたら達は明に再会する。
明の第一印象は「胸が大きい」。
髪を編み込んで
ひらひらのドレスを来て
「女」と「若さ」を武器にしている。
自信まんまん。
余裕の笑みで話しかけてきた。
明たちも競技会に参加するのだ。
出るのはB級。
5段階で上から2番目の級。
たたらたちはいちばん下のノービス。
千夏が静かにブチ切れる。
明がいいパートナーをゲットして
スタンダードを踊るのを
目の前で見せつけられたからだ。
千夏の暴走
「今日はいつもより大きく動くわよ」
千夏は宣言して踊りはじめる。
歩幅が大きい。
タイミングが変わる。
カップルの一体感を出すために
打ち合わせどおりにやっていこうと
さんざん練習したのに。
千夏は、まったく違う動きをはじめた。
「ちっとも合わせる気ないよね!?」
たたらは千夏に振り回される。
ドレスの重みで遠心力がかかる。
思うように動けない。
「312番頑張って-!」
「グランプリで待ってるから」
明からの声援がとぶ。
声援と見せかけた挑発である。
千夏にだけつうじるイヤミだ。
女子は怖い。
千夏はますます暴走する。
好き勝手に動いたあげく
最後は、たたらを骨盤で押し出して
フィナーレを決めた。
リーダーを放っておいて
お辞儀している。
たたらの対応策
たたらはむかついている。
こんなのアウトだろ。
「フロアがおおきかったから」
「つい大きく動いちゃったの」
笑顔で千夏は謝ってくるが
反省の色はない。
「たたらは合わせるの上手じゃん」
「カバーしてよ」
「別に『リードしてほしい』とか思ってないから」
ひどい言い方である。
こんな奴と踊れるわけない。
決勝にあがったが勝てる気がしない。
音楽がはじまったら
どうせ千夏は勝手に動く。
男性のリードを踏み越えて
自分のダンスを踊り出すだろう。
たたらは振り回されるだけだ。
どうすればいい?
音楽が始まる。
たたらは動かない。
千夏がとまどう。
まだ動かない。
千夏があせりはじめる。
観客がざわつく。
「この甲斐性なし」
じれた千夏が動き始めたタイミングを狙って
たたらはようやく踊り出す。
もうリードはしない。
リードしたってついてこないからだ。
徹底的にフォローする。
フォローしているのに
リードしているように見せる。
たたらのギリギリの対応がはじまった。