合宿は楽しい。
学生時代の部活ようだ。
清春にガジュ、釘宮と
キャラがそろってちょっとしたお祭り感がある。
女子たちもベッドメイクしながら
寝室でおしゃべりする。
ダンスのこと、パートナーのこと・・・。
たたらはお出かけ気分で楽しんでいたが、
千夏のほうはそうでもないらしい。
「緊張してるわよ!!!」
「すごいストレス」
兵藤ダンスアカデミーはエリートコースだ。
マリサ先生が怖い。
アマの2トップ、清春とガジュたちと
一緒に練習するのはプレッシャーだ。
レッスンを見られるのが恥ずかしいし、
フロアを使うのが怖い。
千夏は気後れしていた。
東京都民DS大会A級戦とは
ふたりはマリサ先生に呼び出された。
次の大会を指定される。
合宿のあとすぐに東京都民DS大会A級に出るように。
A級で優勝したら、仙台グランプリに出ていい。
たたらから見たら「A級」は敷居が高い。
まだD級になったばかりだ。
静岡の競技会では身の程を思い知らされた。
一次予選を踊り抜くこともできず
棄権してかえって来た。
しかしマリサ先生からしたら
この程度は勝ってもらわないと困る。
棄権はしたが2種目で満点をとった。
ということは
A級にでる程度の実力はついている。
しかも今年の東京都民DSは開催がおくれ
ランキング対象でなくなっている。
いつもよりレベルが下がっているはずだ。
このなかで優勝できないと話にならない。
勝ちグセをつけるための出場だ。
「負ければそこが身の丈」
「つまらないでしょう」
マリサから見て日本の競技ダンスは遅れている。
レッスン料が高い。
教える時間が短い。
練習場所が少ない。
だからマリサは見所がある生徒を庇護する。
「才能やセンスは武器」
「コーチにはそれを守る義務がある」
たたらは出遅れているのだ。
マリサはたたらが成長できるようお膳立てする。
「私の設計通りに育って貰いますから」
つべこべ言わずついてこい。
そういうことだ。
たたらと千夏にさらなるプレッシャー
マリサ先生はふたりにハードルを与える。
大会直前に足形を追加したのだ。
覚えきれない。
ふたりは必死で練習する。
大会まであと2週間しかない。
自分の動きを覚え、相手の動きも覚え、
お互いのコンビネーションがあうように
体になじませなければならない。
食事時になっても練習場にこもって出てこない。
今さら足形練だ。
大会には釘宮たちも出場する。
釘宮を破って優勝しなければ
グランプリには出られない。
追い詰められている。
会話がとげとげしくなっている。
たたらのほうが新しい足形を良く覚えている。
吸収が早いタイプなのだ。
千夏はあせっている。
初心者のたたらに遅れをとっている。
このままだと大会に間に合わない。
たたらからカップル解消を宣告されかねない。
口論のあげく千夏は寝室にかけこんだ。
泣いている。
たたらは途方にくれた。
どうしていいかわからない。
清春がヒントをつぶやく。
「ほんの少し意識が及べば
問題は全て消えるのにな」
あっさりと解決できそうにもないが・・・