コンテ本選を振り付けるかどうかは
クラシックのレッスンをみて決める。
そう今井先生に言われて、
潤平は中村先生のバーレッスン受ける。
センターレッスンは不要とそっけなく宣告され
あわててバジルのバリエーションを踊りだした。
YAGP予選で練習したやつだ。
さんざん踊った。
本番前夜に100回通すなんていう無茶もした。
最高にほめられまくる潤平
今井先生の前で潤平は
バジルのバリエーションに入り込んで踊れている。
『眠り』のオーディションに向けて練習したことが
潤平をパワーアップさせている。
潤平個人の「踊る喜び」をはるかに超えて
ドラマを物語ることが視野に入ってきた。
「バジル」の太陽のように明るいキャラクター。
「ドンキ」の壮大な世界観。
背後にあるスペイン歴史と精神。
「ドンキ」を作ったのはロシア人たちだ。
ロシア人の完成を通してみると
バジルは眩しすぎる。
「バジル」っ・・・・・・
「クラシック」くっっっそ楽しいっ!
潤平は思わずさけんだ。
クラシックの楽しさがわかってきた。
異常な速さで潤平は上達している。
今井先生が「もういい」といったのは
潤平の成長を認めていたのだ。
中村先生も潤平をほめる。
バレエをはじめたのが遅い。
背が伸びてコントロールが効かない。
焦りと劣等感が、潤平を急成長させている。
潤平本人はそんなに努力している意識がない。
ただはた目にははっきりとバレエへの打ち込みぶりがわかる。
「ルーチンでなく成長しようと考えてる」
こういう生徒はめったにいない。
教えがいがある。
YAGP本選の音楽はホーミー
今井先生は振り付けを引き受けた。
ただしその条件は難しい。
潤平が舞台上で自分のすべてをさらけ出すこと、だ。
「全身全霊」で、だ。
それができるなら、振り付けてやる。
ふつうならコンクール用の振り付けは
審査員に潤平の長所を見せるように作る。
だから今井先生の作品ではない。
振付家イマイの作品を踊りたければ
今井先生の創作意欲を満たすような素材を提供しなければならない。
そのために要求してきたのが
「全身全霊でさらけ出すこと」だった。
潤平に異論はない。
そういうのは得意だ。
全力を尽くす。
前のめりで、振り付けをお願いした。
今井先生は音楽をかける。
ホーミーだ。
モンゴルの民族音楽。
ひとりで二つのパートを歌う特殊な歌。
音源を渡された潤平はホーミーを聴きながら踊りだす。
どんな振り付けになるのか想像もつかない。
黒島はほったらかし
黒島が久しぶりに登場する。
潤平の彼女だ。
いや彼女のはずなんだけど
潤平があまりにバレエの世界へ行きっぱなしなんで
もうどうなっているのかよくわからない。
潤平はバレエの事ばっかりだ。
ほったらかしで、なんだかかわいそうだ。
大晦日にみんなで合格祈願いこうよ、
潤平も誘っといて、と言われ黒島はこまる。
「ケンカすらしてねーし」
仲直りなんてしようがない。
潤平はごくナチュラルにバレエに打ち込んで
くろしまのことなんか忘れている。
綾子先生から生川入団の提案
いっぽう潤平宅には綾子先生がきている。
潤平の母に提案があるのだ。
高校進学せずに生川へ入団したらどうか
という提案だ。
潤平は今、勉強にまったく興味がない。
バレエばっかりだ。
綾子先生も潤平母も感じている。
だったらもうバレエ団に入ったらいいんじゃないの?
そういう話を持ってきた。
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