チャクラが開いたムラサキ
ヨガ部の主将がびっくりしている。
ムラサキのチャクラが開いているからだ。
はためにもはっきりわかるくらい全開。
「エネルギーが大地から
身体をつきぬけ宇宙に開放される」
ヨガのポーズを取る脳天から
何かが吹き出している。
翔之助のたたずまいも異様。
インドの行者のようだ。
両手で立ち、足を地面と平行にキープ。
上に小鳥たちがとまり
猫が座りこむ。
人間ではない。
石か樹木のような静かさで
なんの気配も発さない。
変態的なポーズをキープしたまま
切れ長の目で地面を見つめる。
ソラがやってきた。
ヨガ部のキャプテンは驚愕する。
「ここにも!」
すさまじいエネルギーを放射する人間がいる。
3人を目の前にして動けない。
黒いタイツのみという
ヨガの正装で主将は固唾をのんで
3人を見守る。
ダンス部の行き詰まり
ソラは発破をかけにきたのだ。
ダンス部設立はどうなっているのか?
いつまでもポーズをとっていても
このままでは、なにもおこらない。
ダンス部はまだできていない。
ムラサキはヨガ部に出てきて
ポーズをとっているだけだ。
行き詰まった状況をソラに話し始める。
ダイエット達成後のムラサキは
クラスメートたちに衝撃をあたえた。
ムラサキはやせて、美人になった。
転校生かと思われた。
とても同一人物とは思えない。
ぽっちゃりの女子たちが
ムラサキを囲んで事情聴取をはじめた。
ライザップ?
いえ、ダンスよ。
(まだダンスをはじめていないのに断言)
そのまま女子たちを引き連れて
ムラサキは職員室を襲撃する。
ヤクザの親分のような校長に
ダンス部設立を認めさせるのだ。
「なんじゃおのれら」
校長は広島弁だ。
オールバックの髪型で
眼光鋭くムラサキに相対する。
ネコをなでながらタバコを吸っている。
大きな机には仁王像を置き
背後には墨痕あざやかに「漢気」の2文字。
ムラサキはたじろがない。
人数は揃えた。
あとは創作ダンス部設立の許可をいただきたい。
ヤクザが独立して
新たな組を立ち上げるかのような気概をみせた。
校長の条件はひとつ。
顧問の先生を見つけること。
ムラサキは職員室で即座に叫ぶ。
「顧問担ってくれる先生を募集します!」
誰も顧問になってくれなかった。
部活の顧問はたいへんなのだ。
時間をうばわれる。
総当たりで先生がたにお願いしたが
引き受けてくれる人はいなかった。
「これは詰み状態ゆえのヨガよ」
ムラサキはダンス部を作れなかったのだ。
しかたなくヨガ部に来てポーズをとっている。
脳天から意味なくエネルギーを放出している。
踊るのにダンス部は必要ない
ソラは問いかける。
どうしてもダンス部は必要なもの?
目的は部の創設?
ムラサキは原点に立ち返った。
やりたいことはダンス作品をつくること。
おさないころにみた魔法のようなダンスを
自分の手で作り上げることだ。
頭の中で勝手に舞台がはじまる。
なんどもなんども見えた。
開幕やクライマックスのかけらが。
この夢を自分の手で現実にしたい。
ダンス部はそのための手段にすぎない。
さいごに舞台をかたちにできるならば
ダンス部なんかなくったって構わない。
ソラは翔之助とムラサキを挑発する。
「翔之助よりもムラサキちゃんの踊る姿が楽しみ」
翔之助はのった。
風をまきおこして
無言のままムラサキを手招きする。
ダンス勝負に誘っているのだ。
まずはムラサキのターン。
『嵐』のダンスがはじまる。