ソラの合流
ソラはペダルを踏み抜いて
自転車で爆走する。
カーブの多い急傾斜を登りながら
体の中から感覚があふれそうだ。
ドラゴの言葉をきいたあと
一目散に頂きを目指してこぐ。
人知れず何度も登った道だ。
不思議な衝動にかられて
全力で駆けつけぼう然としていた。
今日は明確な目標がある。
ムラサキと翔之助に会うのだ。
翔之介のダンスを見てから
ソラは思い出した感覚がある。
それは自分の体だ。
体ははっきりと区切られたものではない。
皮膚の内側で血と汗と涙が流れ
内蔵や筋肉、骨を動かしている。
あらゆる体液の流れが
生きた身体そのものなのだ。
言葉はかりそめのもの
皮膚の外側の世界
究極的には嘘の世界
社会を整理するために
とりあえず付けられたしるしにすぎない。
ケーブルカーから外を眺めながら
ソラは思考を整理する。
リアルな肉体は社会から消される。
生々しくて処理しきれないから。
ソラが絵を描くのは
物事をありのままに見たいからではないか。
言葉の意味づけを外し、徹底的に観察する。
世界にじかに触れられる瞬間が
観察をきわめた先に不意に訪れる。
恐怖と快感が混ざった
なんだか分からない恍惚たるもの
自分が絵を描くのは、それに触れるためではないか。
絵を描くだけで満足できていたのに
ムラサキたちを見てからは物足りない。
山上で踊るふたり
ケーブルカーを降りてソラは進む。
脳裏にムラサキたちのシルエットが動く。
衝動のままになりふり構わず踊る姿。
命そのもののように自由にダンスする。
神社に入り橋をわたると
ムラサキたちが踊っている。
真っ黒な影になって狂いまわっている。
対決しているような、
儀式を捧げているような、
得体のしれない姿だ。
9月12日発売