潤平は進学をやめた。
バレエに専念するために通信高校に通う。
プロダンサーとして生きる。
そのために普通の人生は捨てる。
担任の先生がびっくりする。
思いがけなすぎる。
どう指導したらいいのか思いもつかない。
潤平母もなんどもも念押し。
「本当にいいのね?」
「『生川』でいいのね?」
潤平はまだ中3だ。
いくらでも選択肢はあるのに、
生川の研究生を選んだ。
迷いはない。
540(ファイブフォーティー)を入れる
YAGPニューヨーク本選に向けて
潤平は540(ファイブフォーティー)を練習する。
空中での1回転半するバレエの技。
バレエを始めるきっかけになった技だ。
教室でふざけて540を跳ぶ潤平をみて
「バレエやろうよ」と都が声をかけてきたのだ。
いまだに、きちんと跳ぶことはできない。
バンダ中村先生の指導で再挑戦している。
テレビ局が潤平を撮りに来ている。
『眠り』のオーディションが終わって
こんどはYAGPのドキュメンタリーを企画している。
潤平の必死の戦いが撮影クルーひきつける。
負けたけど、挑戦したことがムダにはならない。
衣装デザイナーの前で振り付け披露
今井先生と衣装デザイナーの前で潤平はコンテを踊る。
今井先生が振り付けのテーマを説明。
主題は「彼自身の”道”」だ。
ホーミーにのって潤平ははるかな旅をする。
過去の記憶がすべてつながっている。
足を踏み鳴らすような動きは
コンテクラスの即興で
潤平が披露したアフリカ風の振りだ。
540(ファイブフォーティー)だって
むかしからチャレンジしてきた技だ。
まだうまくやれないけれど、
バンダ中村先生がいれば
今度は成功するかもしれない。
今井先生は潤平を動かし、
動きの可能性をひとつひとつ確かめる。
『GEISYA』公演でさんざん練習した
バック転すら試していた。
潤平の体そのものが記憶で
過去からつながる歴史である。
いろんなストーリーを呼び起こし
発掘してまとめ上げる。
あいかわらずの夏姫
レッスン場を夏姫が通りすがる。
音符を撒き散らしながら夏姫は歩く。
潤平にはそう見えるのだ。
夏姫を見るだけで頭の中に
「眠り」の音楽がきこえる。
「姫ッ!帰るんだろ」
「送って行きましょう!!」
潤平は回転しながら迎えに行く。
オーディションの記憶が夏姫にかさなっている。
潤平の生活はもはやミュージカルだ。
バレエにすっかりとりこまれている。
夏姫はあいかわらず容赦ない。
潤平の能天気さに腹を立てている。
「生川の犬に用はない!!」
生川バレエ団で育った夏姫にしてみれば
外の世界にこそ自由があるのだ。
海外留学して海外のバレエ団に入る。
潤平が仲間になると思ったのに
あっさり生川に入団してしまうことが悔しい。
あいかわらずの海咲
海咲も悔しい。
「俺が目指してる言うたもんばっかやんけ」
ロッカー室で潤平の髪をつかんで話しかける。
自分の目標を、潤平にあっさり獲得されてしまった。
海咲だって生川入団してロシア留学したかった。
綾子先生にそうお願いしたのだ。
しかし実家との約束で、
ひとまず高校に通わねばならない。
「自信ないわ」
海咲はあいかわらず慎重で用意周到。
「眠り」の王子という大役を乗り越えねばならない。
楽天的な潤平とは対照的だ。
卒業式で都と再会
黒島とは自然消滅か?
バレエの練習ばっかりで連絡も取れない。
潤平は初もうでにも来なかった。
しかたないことだけど、ちょっとかわいそうだ。
あっというまに卒業式。
ひさしぶりに都がいた。
都は大人っぽくなっている。
都を見るだけでオーケストラが鳴る。
もちろん曲は「白鳥の湖」だ。
めっちゃかわいい。
性格もいい。
目が大きくて
「うふふ」って笑うと
まつ毛が閉じる。
胸がいっぱいになるわ。
都は潤平の人生を変えてしまった。
おかげでバレエに戻ってこれた。
「俺の事、見つけてくれてありがとうな」
潤平は都にいう。
ちゃんとお礼の言える男だ。
8月9日発売
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