バレエをやるならまずシューズ?
宝生はいきなり梨鈴を連れ出す。
重要ミッションがあるのだ。
シューズの購入である。
練習はさておき、
いきなりショップに向かう。
そもそも靴を買うのは楽しい。
試着すると、
歩きはじめの子どもみたいな
うれしい気持ちになる。
まずは形から。
バレエの雰囲気を肌で感じる。
バレエ用品の独特のオーラ。
3人が向かったのはチャコットっぽい店だ。
ガラス張りの路面店。
スーツを着た店員さんが
キラキラ上品に客を迎える。
宝生にエスコートされて店に入る。
梨鈴は雰囲気にのまれる。
「ハードルが一気に5段階くらい上がったような」
「これは確かに重要ミッションかも」
シューズを買うだけなのに・・・。
取り巻きに囲まれる宝生
店内には女子の一団がいた。
宝生を発見し、いっきにざわめきはじめる。
全員がクソていねいな敬語でうわさ話。
宝塚音楽学校か、学習院もどきのグループだ。
宝生は彼女らの間ですでに伝説になっている。
バレエスクールから消えた謎の天才だ。
あっというまに取り囲まれ
シューズを見るどころではなくなった。
タイツとシューズをあっさり購入
宝生が女学生に囲まれているすきに
桔平と梨鈴はぬけだしてタイツを選ぶ。
タイツはむずかしいのか?
合わないと練習でつらい。
桔平は自分でそう言っておきながら
あっさりと選んで梨鈴に渡す。
「こんな感じだろ」「ほい」
お前はタイツソムリエか?
シューズも拍子抜けするくらい
すんなり決まる。
一発だ。
「ちょうどいいみたい」
終了。
いや重要ミッションじゃなかったのか?
宝生はぜんぜんからまなかったし。
バレエスクールをやめた経緯
ふたりをよそに宝生は取り囲まれている。
バレエの天才なのだ。
スクールでも目をかけられ
ローザンヌコンクールを勧められた。
宝生は踊りながら会話する。
先生を相手に回転を止めない。
いちいちポーズを決めながら発言。
コンクールの提案を理解したとたん
宝生はスクールを辞めてしまった。
「競うために踊るくらいなら
僕は死をえらぶ!」
各種の技を決めながら
先生に、クラスメートに、
そしてスクールへ別れを告げる。
「真のバレエ」をだけが宝生の目標。
そのためにはコンクールすら不純。
回転しながらスタジオを退場する。
突然とりのこされて
先生も生徒たちもあぜんとする。
コンクールに出ないなんて
試合に出ない野球部みたいなもんじゃないか。
エトワール呼ばわり
ふたたび現れた宝生に
バレエスクールの女子たちは
おどろいたのだ。
しかし宝生の耳に
周りの風評は入らない。
信じがたいほどに
バレエしか見ていない。
衆人環視の中で手をさしのべ
梨鈴を「エトワール」とよぶ。
「君こそがバレヱ部の主役だ」
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