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【10ダンス ネタバレ】2巻7話

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ブラックプールのテーブル席

ラテン鈴木はイギリスのブラックプールに来ている。
スタンダード杉木に呼ばれたのだ。
杉木が試合で戦うところを観戦するため。
そしてどうやら仲間を引き合わせてくれている。

いい席である。
フロア脇のテーブル席。
まわりは社交ダンスのエリートばかり座っている。
元世界チャンピオンだらけ。

ラテン鈴木は無差別にフェロモンを振りまいてしまう。
ラテンなまりスペイン語なまりの英語。
甘ったるい声と、上目遣い。
ふつうに喋っているだけのつもりなのに、セクシーな誘いをしてるみたいだ。
会話の吹き出しの中にハートマークがたっぷりつまっている。

あぜんとする元チャンピオンたち。
鈴木の手をなでて話しかける。
無意識の色仕掛けにひくどころか、むしろ喜んで興味津々だ。
ゲイのダンサーは多い。
ここはそういうテーブルなのだ。
鈴木がキューバ生まれだと知るや、ダンサーたちはいっそう盛り上がる。
キューバはラテンダンスの聖地だ。

ストイックすぎる杉木

ラテン鈴木はスタンダード杉木のところに走る。
あんなゲイだらけのテーブルに座らされたことが我慢ならない。
もちろん競技ダンスのエリート中のエリート達であり、
鈴木が世界チャンピオンになるために力になってくれることは理解している。

それでもラテン鈴木はダンスの力だけで世界をとりたいのだ。
人脈に頼らず実力で自分を認めさせたい。
この点で鈴木は、杉木よりピュアだ。
実際に世界2位をとり続けている杉木は具体的に必要なものを知り抜いている。

杉木はバートナー房ちゃんとも揉めている。
ドレスの色の問題だ。
房ちゃんは好きな色を着て踊りたい。
杉木には関係のない話だ。
試合に勝つためにドレスの色を決定する。
次の選曲はどうなるか。
フロアの照明はどうなるか。
他の競技者はどんな色が多いか。
トータルで判断し、着るべきドレスを決める。

勝利の確率を上げることだけが杉木の基準になる。
お気に入りのドレスを着てテンションが上がるとか
パフォーマンスが下がるとかいうことはプロとしてあってはならない。
なぜこのドレスにすべきなのか、杉木は言葉で完全に説明できる。
しかし試合前だというのに房ちゃんと揉めてしまうのだ。

鈴木にたいしても明確に説明する。
たとえゲイだらけだとしても、こんご世界チャンピオンになるなら知り合っておくべき人間だ。
だから鈴木をあのテーブルに座らせた。

現世界チャンピオン登場

鈴木と杉木の論争のさなかにひとりの男が近づいてきた。
スタンダードの世界チャンピオン、ジュリオだ。
杉木の感情が高ぶる。
ジュリオしか見えない。

ラテン鈴木は気にくわない。
嫉妬している。
杉木には自分を見ていてほしい。
自分がまるで眼中にないのを思い知らされるのは不快極まりない。
ラテン鈴木はふたりの会話に割り込んで自己紹介をはじめた。

あいかわらず鈴木の英語にはハートマークが飛びまくっている。
無意識のフェロモン攻撃である。
甘ったるいしゃべり方に上目遣い。
あまりのひどさに杉木は、鈴木の口を押えて物陰に引っ張り出す。
それからカーテンをかぶせてディープキスした。
「じゃあハナムケは頂いたんで行きます」
「しっかり見ているように」

鈴木をカーテン内に残して、杉木はあっさりと試合へ向かう。
何年ものあいだ世界戦で2位を取り続けてきた。
ジュリオに負けて1位を逃し続けてきた。
今度こそは勝てるのか。

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