カボ君たちのライバル校
本番がはじまった。
有力候補は3つ。
カボ君たちの一凛高校の他にすごいところが2つある。
天野高校と昌谷高校。
対照的なライバル。
まず音楽がちがう。
天野高校はQueenのAnother One Bites the Dust
正統派。
指先まで動きがそろう圧倒的なダンス。
ステージマナーが良くて、ダンスを知らないおっさんの期待にしっかり応える。
昌谷高校はProfのAndre the Giant。
挑発的でトリッキー。
「高校生の大会」というワクを大きくはみ出している。
ルール無用で勝手にやっているようだが、逆にストリートダンスの本流を追いかけている。
しかし審査員の中には「礼儀」とか「若者らしさ」を基準にしてしか見られないおっさんがいる。
昌谷高校はそういう審査員をみずから切り捨てる。
「いいの俺らは」
「順位で負けたとしてもダンスで勝ってる」
ダンス・ステージの足切り基準
客席にきた井折先輩が解説をしてくれる。
ダンスの良し悪しはまず音でわかる。
いいチームは音にこだわる。
音質へのこだわり
さいきんの音源は圧縮されている。
その度合いによって音質に差が出る。
イヤホンなら気にならないかもしれないが、広い会場に大きなスピーカーで鳴らすと目立つ。
非圧縮のならWAVならまず問題なし。
mp3でも圧縮しすぎると劣化する
音じたいが明らかに悪い。
低音が割れたり、高音がぼやけたり、キンキンしたりする。
そしてダンスに合わせて編集する必要もある。
このときつなぎ目が不自然だったりすると、耳に不快。
ダンスへのこだわりは音に現れる。
鳴っている音がいいかげんだと、ダンスも同じだ。
2,早取り
広い会場で音を鳴らすと早取りがめだつ。
音が後ろの席に伝わるまで、時間がかかるからだ。
つまり後部座席では音が遅れて聴こえる。
少しの早取りが、致命的なほど強調される。
メンバーのひとりでも早取りすることがあってはいけない。
3,移動
もうひとつが移動だ。
踊りと踊りのつなぎ目のところ。
位置移動する際、基礎力のないダンサーは「音楽が消えてしまう」
次の立ち位置を確認するために頭からダンスがなくなってしまう。
リズムを失った動きは見苦しい。
いちばんの判断基準
ダンス界の大御所アッセイさんはダンスのどこを見るのか?
「・・・んー・・・、一番は・・・パッション?」
なんだかいいかげんな言い方だ。
でも部長の恩ちゃんが気にしているのも「パッション」。
ステージ直前に「パッション」をアドバイスした。
たくさん練習すると、「流す」感じになるかも。
練習不足だと、うろ覚えで「追う」感じになる。
ベストなのは、完全に覚えたあげく、今はじめて即興で踊るかのような気持ち。
「新鮮さに勝るパッションはない」
一凛高校ダンス部の出番だ。
恩ちゃんのソロでまずツカミはO.K.
「・・・本当にみんな、よく練習してる・・・」
アッセイさんがつぶやきながらメモを取る。