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【#ダンス・ダンス・ダンスール#考察】人間関係の悩みは日本人の特性なのか?

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「ダンスール」潤平の素の姿

潤平のコンテンポラリーの主題は、自分をいつわることの辛さだ。
もともと岩井先生の振り付けの主題は「道」だった。
自分の将来を選び取る決断。
潤平は部屋に閉じこもって表現を深化させた。
「全身全霊バージョン」では、前フリが強調される。
前提というか。
なぜ道を選ぶのかをしっかり表現する。
もともとみずからの気持ちを押さえこんで生きてきたからこそ、道を選ぶ決断をダイナミックに表現できる。

「ずっとこんな感じ。ずっと見えない泥の中」

外交的な潤平は素の姿ではなかった。
自由にやっているように見せながら、実のところ周囲の目を必死に読み取っていた。
「クラスの人気者」は楽ではないのだ。
センサーをフルに働かせて、他人を喜ばせる行動を選び取っていた。
自分のやりたいことは隠しておく。

「俺けっこー知ってる」
「愛想よくして許してもらう方法」
「のらりくらりかわす方法」
「友達とも仲良く楽しくほどほどに」

兵ちゃんが潤平にあこがれたのはそういうところだ。
対人関係をうまくやる技術。
自分の居場所をコントロールするたくましさ。
潤平のやり口を兵ちゃんは理解していた。
潤平の技術を応用して、学校で自分のポジションを高めた。

「その場その場で相手の欲しい言葉を言って」
「俺って全く幸福な上手いことやれてる少年だし」
恐るべき人たらしのテクニック。
三丘のおっちゃんも、黒島もすっかり潤平に引き込まれた。

だが仲間たちがいていた潤平は、真の姿ではなかった。
相手の心を読み取り、ふさわしい形で投げ返す、自動人形のような反射。

人類の家畜化計画

潤平が抱える問題は、大きく言えばいまの人類が抱える問題でもある。
人類は自分を抑え込んで品種改良しているところだ。
人口密度が上がり、他人と接して生活しなければならなくなった。
そのうえ技術がすすみ、武器が発達した。
手軽にを殺せる。
ほかの動物たちのように、ケンカでトラブルを解決しようとしたらあっという間に殺し合いになる。
おかげで人間は暴力で争いを解決することができなくなった。
繊細な交渉をかさねて他人と共存し、社会を作らねばならない。
戦争反対。
暴力反対。
平和主義だ。

最先端にいるのが日本人だ。
戦争放棄と絶対的平和主義。
しかしやってみると非暴力の交渉は大きなストレスを生む。
敏感に空気を読み合う。
オラオラな態度を取り続けていたら生きていけない。
社会を乱さないように優しく。
まるで家畜のように、自分で自分を飼いならして最大限の利益を得る。
戦い方が陰湿になっただけだ。

ユーゴスラビアの内戦でグサグサ殺しあうのも悲惨な経験だが、日本のムラ社会で足をひっぱりあうのも別な意味で悲惨だ。
会社がつらい。学校がつらい。もう保育園ですでにつらい。
だが人間関係の泥沼の中でもがく姿は、強力なテーマになる。

「あはは、いいぞハッピーボーイ」
「その調子で俺を救ってくれ」
岩井先生が喜ぶ。
「なにせ俺は心を病むものだからね」
「いいよその顔たまらん」

潤平の救いはバレエにある。
バレエを選んで「物語る側」にまわる。
自分が欲しいものを叫ぶことができる。

15巻発売日は12月12日

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