おっさんのヤニ休憩で審査遅延
スーツのおっさんが審査員室にはいる。
コンテスト参加の高校生たちがあいさつするが返しもしない。
「どうもどうも遅くなりました」
「急に電話がはいったもんで」
審査委員のアッセイさんが、おっさんの手元をみる。
灰皿。
おっさんはタバコを吸ってきたのだ。
みんなこいつのヤニ休憩まち。
アッセイさんはあえて灰皿のことにはふれない。
「・・・ええ。それではコンテストの最終結果の話し合いをしましょう」
ステージを終えたダンス部員たちが結果発表を待っている。
こんなおっさんがいて正当な審査ができるのか?
必死で練習したあげく、いいかげんな審査をされたんじゃ浮かばれない。
審査の待ち時間はおちつかない
一凛高校のメンバーたちも落ち着かない。
ソワソワと不安だ。
自分たちは良かったと思うけどよくわからん。
他校とくらべて、どの程度のポジションにいたのか部長の恩ちゃんに意見を求める。
恩ちゃんは冷静だ。
トップ3は、天野高校と昌谷高校そして一輪高校。
1,天野高校は高校生ダンスの王道。
コンテストで勝つための踊り
2,昌谷高校はダンサー好みのハイセンス。
省略と「ヌケ感」を見せた。
3、そして一凛高校は王道+ハイセンス。
欲張りに両方ねらった。
あとは審査員がどう判断するかだ。
一般人目線では天野高校か?
玄人目線なら昌谷か一凛?
しかし「ヤニ休憩のおっさん」みたいなやつがいると、結果がどう転ぶかわからん。
審査時間が長引くと不安がつのる。
カボ君も自分の踊りを思い返している。
うまく踊れたかどうかよくわからない。
集中はできたと思う。
「音楽と自分と湾田さん以外何もなかった」
だけど完全に振りが飛んだ。
全部忘れてしまった。
音のアクセントだけ覚えていたから、即興のつもりで踊った。
はたからみたら自分はどう見えたのか?
どうやら悪くはなかったらしい。
「あれだったら文句ない」部長はそう声をかけてくれた。
「迫力すごかったね」「個人賞とれたりして!!」
他のメンバーからはほめられた。
もしかしたら良かったのかもしれない。
カボくんはドキドキする。
2年生で一番うまい平井さんが声をかけてきた。
カボくんといっしょに踊ってみたいと言ってくれている。
カボくんはすごくよかったのかもしれない。
コンテストの結果・・・一凛高校の優勝!
ようやく結果発表。
おっさんのタバコのせいでみんな待たされたぜ。
3位:昌谷高校
2位:天野高校
そして・・・
1位:一凛高校 だ。
いっきに高揚する一凛高校メンバーたち。
とびあがって歓喜する。
ワンダさんとカボくんは抱き合って喜んだ。
最高だ。
部長の恩ちゃんがステージに上がり優勝カップをもらう。
「今大会の優勝にふさわしい素晴らしい作品でした」
タバコの審査員もなんだか良いやつに見えてくる。
まあよかったわ。
個人に贈られる「アッセイ賞」はワンダさんがもらった。
「どぅえー!!」
興奮しまくるワンダさん。
カボくんも拍手するが、自分の意外な感情にきづいてびっくりする。
「あれ」
個人賞を受賞できなかったのが悔しい。