ボールルームへようこそ11巻の発売日は4月16日
全種目終了
井戸川が釘宮の手をひいてフロアからでる。
いままでのふたりの関係からはあり得ない状況だ。
釘宮ひとりでは動けない。
井戸川がリーダーシップをとって進む。
横顔が美人だ。
初登場のときは表情がなかったのに
見違えるように人間らしい。
「少し座ったら?釘宮くん」
「別に誰も文句なんか言わないと思う」
退場のときの釘宮はなんともいえない顔をしていた。
釘宮は最高の状態ではなかった。
このさき、昔のように踊れることもないだろう。
井戸川の言葉は敗北宣言か?
「(負けたって)誰も文句なんか言わないと思う」
そういう意味にも取れる。
釘宮は今もっているものを出し切った。
事故前の身体ならもっと理想の動きに近づけただろう。
だが釘宮の体はこわれてしまってもとにはもどらない。
「気の利いたこと言えなくてごめん」
なぜか井戸川があやまる。
待機中の釘宮ペア
釘宮が話しはじめる。
「ずっと気になってたんだよなぁ」
「お前がダンスをやってる理由」
井戸川ってなにを考えているかわからない。
向上心が強いようにはみえない。
ダンス好きにすら見えない。
練習中も釘宮に罵倒されっぱなし。
けっして楽しくなかろうに・・・。
井戸川は「理由」を語りはじめた。
「子供の頃、兄とやってて楽しくて・・・」
ダンスが楽しかったらしい。
そしてダンスが好きらしい
「あ・・・ごめんなさい」
井戸川はなぜか釘宮にあやまる。
「私、毎日遊んでいるみたい」
井戸川は釘宮と踊るのが楽しかったのだ。
びっくりである。
「・・・それとさっきはでしゃばってごめん」
フロアで釘宮をフォローしたことを言っているのか、
それとも釘宮の手をひいて連れ出したことを言っているのか。
どっちにしろ、井戸川はめちゃくちゃ男をたてる人らしい。
釘宮のほうがとまどう。
そのまま2人は床に座る。
2メートルくらい距離を開けたままだ。
不思議な関係だ。
「まぁ・・・お前がいてくれて良かったよ」
釘宮のが感謝?の言葉をつたえる。
「順位がもうわかっている」
清春が席を立つ。
結果発表を待たずに帰るのだ。
「順位がもうわかっているのに残る意味あるか?」
たたら組の優勝なのか?
理想に到達しなかった釘宮ペアにたいして
たたら達は最後の最後で新境地に達した。
しずくも席をたつ。
「結果は見なくても分かるもの」
釘宮たちの雰囲気からして
きっとたたら達が勝つのだろう。
しかし発表されるまで落ち着かない。
千夏の達成感
千夏はあいかわらず、ふてぶてしい。
満足感でうれしそうにも見える。
「あーあ、踊り足りないな~」
たたらに話しかける。
「もう1ヒート位追加であっても余裕じゃない?」
とんでもないことをいう。
千夏も試合前日に母親に話していたのだ。
もうダンスをやめるかも、と。
限界までやりきった自信があるのだろう。
必死に努力した実感があれば、
結果はどうあれ受け入れられる。
だが結果発表は次回なのだ。
まさかの引き伸ばし。