今回は中村先生の回である。
中村先生の修行時代
中村先生は自分の父にバレエを習った。
父は厳しいタイプの先生だった。
ほめない。
体罰があたりまえ。
洗脳状態になる。
「ーもうバカは帰れ」
「バカでブサイクで華がない奴は辞めちまえ!!」
ののしられながら、お願いして指導していただく。
昔はピアノの先生も過酷な人が多かった。
人格まで徹底的に否定される。
ふだんの指導がひどいせいで、ぎゃくに本番が救いになる。
すくなくとも本番中はぶっ飛ばされない。
「それは自由の合図」
「舞台の上だけが先生に支配されない世界!」
中村先生にとっては、留学も救いだった。
慣れない土地での不自由な生活をしていても
父のもとで過ごすよりはマシ。
気楽に過ごせる。
中村先生の繊細な指導
中村先生はバレエ教師になった。
自分の父とはちがい、精神的なケアができるタイプだ。
生徒たちが舞台に上がる際の状態を繊細に察知できる。
心身ともに100%万全で100%の実力を
あの未来のかかった舞台で出し切るなんて、
しかもまだ10代そこそこの子供が!
自分の未来を真剣に懸けている子であればあるほど
それがいかに難しいことか良くわかっている
本番後にマジで落ち込む夏姫を
中村先生は的確になだめる。
潤平をケアする中村先生
本番前の潤平も動揺しまくっている。
緊張のあまりえづいて、日本に帰ろうと言い出す。
中村先生は潤平を落ち着かせる。
「精神の弱いものは舞台に上がる適性がない」
「さっさと辞めたほうがいい」
中村先生はそんな考え方をしない。
そもそもこだわりの強さや繊細さがなければ
こいつの踊りは成り立たん。
いつも通りのレッスンをして潤平を落ち着かせる。
それからリハでの進歩点を思い出させる。
冷静な現状分析で潤平の心を舞台へ向かわせる。
「俺の教えはお前の中にある」
潤平は中村先生に打ち明ける。
「俺、グランプリ獲ったら、
ブランコに師事するために、アメリカに残ります」
中村先生は受け入れる。
生川の契約とか奨学金とかいろいろあって
綾子先生にさんざん責められそうだが
中村先生は潤平の決心をそのまま受け止める。
中村先生には確信があるのだ。
「俺の教えはお前の中にある」
自分が潤平の中からいなくなることは決してない。
舞台の上で、潤平のふとした形・タイミングに
中村先生のレッスンがあらわれる。
潤平が世界のどこへ行こうと生き続ける。
だから中村先生は潤平を引き止めない。
ステージで観客の心をさらう潤平は、
中村先生自身でもあるのだ。
中村先生は自分のバレエのなかに
父親の存在を感じている。
同じように潤平の踊りにも、中村先生が生き続ける。
中村先生で感動させられてしまう。