壁ちゃんがあおってくる
壁ちゃんはノリノリだ。
宇千くんとちがって攻撃的でもある。
絶対に勝つ。
気持ちをむき出しにして3ムーブ目にむかってくる。
黒マスクをはずして、前歯もはずした。
カボくんに挑みかかるようにあおってきた。
曲もノリノリだ。
ジャミロクワイのキャンド・ヒード(YouTube)
ボーカルが歌う。
"Got canned heat in my heels"
「かかとに燃えるような熱をかかえているんだ」
DJまで選曲であおってきている。
誘い込まれるようにカボくんは反応してしまった。
壁ちゃんと一緒に動く。
しかしすぐに反省する。
ブレイキンなら壁ちゃんがダントツにうまい。
実力差をはっきり見せつけられてしまった。
3ムーブ目に山場を持ってきた壁ちゃん
流れを作って壁ちゃんはさらに盛り上げてきた。
野獣の顔つきになっている。
前歯がないせいで犬歯が牙にみえる。
歯抜けなのにかっこいい。
体に大量にストックしてある難しい技を技を
つぎつぎとくりだして派手な見せ場を連続。
クライマックスをもってきた。
3ムーブ目にはいって壁ちゃんの構成力が冴える。
よく考えられた作戦だ。
1ムーブ目は目隠しをしてトリッキー。
2ムーブ目はまっとうにスキルを見せる。
3ムーブ目は大技を全力でたたみかける。
見ている方は大満足の内容である。
壁ちゃん優勢の場面でどう踊る?
こんなん勝てるわけない。
壁ちゃんのダンスには、壁ちゃんの歴史がある。
必死で練習してきた大量のストック。
観客を気持ちよくさせるための
よく考えられた作戦がある。
とうぜんのように審査員対策も配慮されている。
数ヶ月前にダンスを始めたばかりのカボくんがかなう相手ではない。
「この3ムーブ目はダメ押し」
「壁谷くんが優勢に見える」
恩ちゃんまでがそう思う。
カボくんには手数がない。
繰り出せる技が少ないのだ。
バケモノみたいな動きをみせられてどうにも対応のしようがない。
同じ土俵、ブレイキンで戦ったら絶対に勝てない。
音楽までがノリノリ。
壁ちゃんよりに思える。
「でも踊る」
前髪をかきあげてカボくんはラストムーブにはいる。
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