壁ちゃんの勝ち
緊迫の準決勝「カボくん 対 壁ちゃん」は、壁ちゃんが勝った。
ジャッジ2対1でわずかな差。
審査員たちも迷った。
カボくんに票をいれたのはアッセイさんだ。
壁ちゃんの仲間が集まって勝利をよろこぶ。
めっちゃもりあがった。
カボくんがダンサーとして短期間で急成長して
しかも壁ちゃんのほうが勝った。
壁ちゃんは浮かぬ顔だ。
勝ってもクール、というよりひっかかることがある。
審査委員長のアッセイさんが自分に票をいれなかった。
「優勝者はジャッジに挑戦権あるみたいなウワサなかった?」
壁ちゃんはアッセイさんと戦うつもりなのか。
ブレイキンの強さを見せつけて、審査委員長をねじふせたいらしい。
審査員の控室に乱入
審査員アビさんは落ち着かない。
壁ちゃんに票をいれたものの
自分の判断にいまいち確信が持てない。
ダンススキルだけみるなら間違いなく壁ちゃんが上だ。
しかし勝敗はスキルだけでみてよいものなのか。
そもそもわざわざバトルするならもっと大事なことがあるのではないか。
審査が終わった後も考え続けるアビさん。
真面目だ。
ダンスに対して誠実。
静かな控室に、とつぜん女子が入ってきた?
「すいません、何でカボくん負けたんですか!?」
カボくんの先輩女子もんめさんだ。
「アッセイさんは逆に何で入れてくれたんですか?」
ストレートすぎる質問。
まるでカボくんの姉ちゃんだ。
アビさんが聞けなかったことをストレートにきいてくれた。
アッセイさんは答える。
「最後のムーブでカベ君が『負けた』って顔してたから」
壁ちゃんは敗北感を感じていたらしい。
壁ちゃんの反省
壁ちゃんは確かに勝った感じがしない。
バトル中にぬいた前歯を眺めながらひとり反省している。
たまたま通りかかったワンダさんに思わずきいてしまった。
「・・・俺のムーブ良かった?」
ワンダさんは素直に答える。
「はい!ブレイキンってほんと凄いと思います!」
壁ちゃんが聞きたかった言葉だ。
カボくんにもそう言ってほしかった。
壁ちゃん凄いです。
と憧れてほしかった。
カボくんの涙
バトル後のカボくんは先輩たちにめっちゃほめられる。
いい試合だった。
カボくんは笑顔で答える。
しかし一人になるとぼろぼろ泣くのだ。
悔しい。
カボくんの悔し泣きはぐっとくる。
本当にいっしょうけんめい戦ったから悔しいのだ。
|