3人でお買い物
物腰の柔らかい青年に誘われて、たたらは外出する。
行き先はスーパー。お買い物だ。
日常雑事はたたらの得意分野。
青年は売り場でたたらにアドバイスを求める。
ふだんスーパーへ来ることなんかなさそうな様子だ。
白い帽子に白いシャツ、上にベストをはおってたたずんでいる。
鮮魚コーナーで・・・
この人は、昨年の三笠宮杯3位の蔵内一創(くらうちいっそう)。
なぜかもうひとり買い物にきているのが袴田天獄(はかまだてんごく)。
昨年の三笠宮杯1位。優勝者だ。
凄いメンツがそろった。
ちなみに清春は昨年の三笠宮杯は失格(たたらの替え玉出場のせい)。
岩熊さんは2位。
一創も天獄もなごやかだが、感じがおかしい。
ふつうの人ではない違和感がある。
高校3年生とは思えない落ち着きと、なんだか不穏な雰囲気がある。
天獄は無邪気に舌ピアスを見せてきた。
一創がキリで穴を開けてあげたという。
喫茶店でたたらのカウンセリング
買い物を終えると3人は喫茶店へはいった。
一創も天獄も大人である。
ごく自然にたたらを気遣って話をつないでくれる。
たたらは思わず自分の悩みを打ち明けてしまった。
自分ではない、別人の話として・・・。
知り合いの「嫌な奴」の話をするので
一創と天獄にそいつの悪口を言ってほしい、とお願いしたのだ。
・・・そいつはパートナーのおかげで優勝したくせに自信をつけてきている。
・・・そいつは憧れの女子を気にしてパートナーをないがしろにしている。
・・・そいつは思い上がって清春をライバル視しているかも。
2人ともたたらの期待にしっかりと答えてくれる。
悪口で。
天獄のほうが「嫌な奴」について結論してくれた。
そいつは大切な人と思い出づくりがしたいだけなんだよ
そういう奴なの
たたらはなんだかスッキリした。
自分の問題を整理できた気がする。
一創がベッドメイク
宿舎にもどってから一創がたたらを寝室へ案内してくれた。
ベッドメイキングまでしてくれる。
一創はお世話係をすることを条件に実家をでることができたという。
シーツを敷く動作すら優雅だ。
喫茶店での話を一創は完全に記憶している。
たたらが話した「嫌な奴」がたたら本人であることも当然みぬいている。
たたらは自分の悩みを整理して打ち明けた。
僕の動機はいつだって
ダンスじゃなくて人でした
仙石さんとか、雫とか、清春とか
まぶしい人たちに近づく口実としてダンスを使った。
だから「お前のダンスを見せろ」といわれると何も返せるものがない。
自分自身がないのではないか?
たたらの悩みはそこなのか。
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